はいこんばんはRM307です。今週は読書回。村上春樹作の短編集「夢で会いましょう」の感想を。
前回「村上春樹作品はひとまず終わり」と書きましたが、短編ではこの作品が残っていました。
夜のくもざる」や「象工場のハッピーエンド」に近い小説・エッセイ。読むのは2回か3回目。
正確には村上春樹さんと糸井重里さんの共著で、おふたりがそれぞれ短編を書かれています。
しかし糸井重里さんの短編をいくつか読んだところ、うーん、正直ぜんぜん惹かれない・・・。
なので今回は村上春樹さんが書かれた部分だけを読んで感想を書きました。申し訳ございません。



1作品あたり1~4ページで、さくっと読めた。読みやすいし良い気分転換になったように思う。

一番面白かったのは「インタビュー」という短編。村上さんがそそっかしいインタビュアーの
質問に答えていくのだけど、最初の方が録音できていなかった。インタビュアーが記憶力に
自信があると言ったので、不安ながらも任せたのだけど、結局でたらめな記事が載ってしまう。
「朝は何時に起きるんですか」→「五時」→「朝の?」→「朝の話をしているんでしょう?」→
「五時に起きて何を?」→「走るんですよ、別に下着泥棒やってる訳じゃない」→「ははは」
という会話があるのだけど、それが結局記事では『起きるのは朝五時。そしてジョギング。
「下着泥棒みたいなものですよ、ははは」本人は照れる』という書かれ方をしてしまう。ひどいw
これはフィクションだとしても、実際に大変な間違われ方をされた事があるのだろうなぁ・・・。
一度記事が広まってしまうと、訂正記事を載せたとしてももう遅い。最初の記事を読んだ人が
また読むとは限らないものね。僕もスレで間違った書かれ方をされた事がある。嫌だったなぁ。

アンチテーゼ」という架空の(あるいは比喩としての)高級食材が当たり前に登場する話は、
「夜のくもざる」にもありましたね!海亀とトランプをする「ストレート」、”ドーナツ化”した
彼女についての「ドーナツ その2」のそこに至る経緯も同じく「夜のくもざる」に書かれている。
こうして続きを読めるのは嬉しいですね・・・と思ったところでこの作品の刊行年を調べたところ、
何とこちらの方が先に出版されたものだとわかった。え?!という事は、「夜のくもざる」では
こちらを元にして過去のエピソードを作ったという事なのか・・・?本当に・・・?すごいなぁ。

そして「ラーク」は「カンガルー日和」に登場した「あしか祭り」の続き的なお話。「あしか祭り」
ではあしかが主人公の元に寄付を募りにくる話だったけど、この「ラーク」では実際にどうやって
あしか祭りが行われるかについて書かれている。率直に言うとあしかは無駄が多い、煩わしい。
あしか的に生きるのは何ともめんどくさそうだな、と思ってしまう。まぁ人間も似たようなものか。
村上さんの中でどうしてあしかはこういう生き物になったのか気になりますね。羊もそうだけど。

カツレツ」はビーフカツレツについての記述。美味しそうで読んでいて食べたくなりました。
僕は牛肉のカツは食べた事が無い。トンカツしか無い。美味しいのだろうか。いつか食べたいな。

コーピー・カップ」は「人生でいちばんせつない時間、それは女の子をタクシーに乗せて
家に帰した後の一時間ばかりかもしれない」という一文で始まる。たしかにわかる気がする。
大切な相手とまたねをしてしばらくはココロが持っていかれ、とても寂しく何も手につかない。
・・・と、またしても月並みな感想を書いてしまった。まぁ誰だって寂しいだろう。当たり前だ。
僕はその寂しさをまた感じたくないので、もう誰にもココロを奪われたくない・・・と思っている。
まぁ言っている事とやっている事が違うんだけど・・・。まぁ気持ちは止められませんからね。

「その日家から一歩でも外に出ると想像もつかない災厄が起こる」と占い師に言われ、主人公が
様々な恐ろしい事を想像しては可能性を潰していく「コンドル」の、そうかコンドルについては
想像しなかったな、というラストも好き。素直だなw「夜のくもざる」の短編にもあったけど、
こういう素直な気持ちをぽんと出して終わるのが好き。もし外に出ていたらどうなったのだろう?

ラッシュアワー時に電車に乗ってきたハイヒールを履いた象が周りから邪魔者扱いされる中、
主人公が優しく微笑みかける「ハイヒール」も好きな話。しっくり馴染んでいる非現実性が良い。
まぁでも、たしかにハイヒールを履いた象に踏まれでもしたらひとたまりもないからな・・・。

パン」は「パン屋再襲撃」の過去編にあたる作品。六、七年前、つばき先生にこの短編集を
紹介した事があったのだけど、この短編があったから勧めたんだったと思う。当時つばき先生には
「糸井重里に興味が無いから」とやんわり断られたけど、村上さんの作品部分なら楽しめると思う。
というかもう六、七年前になるのか・・・!月日の流れにびっくりだな。歳をとる訳だよ・・・。
図書館奇譚」と同様、この短編と「パン屋再襲撃」を合わせた絵本があったのでいつか読みたい。

マッチ」では、クリスマスイブに退屈そうにバーでマッチを折っている女性に対し、男性が
「世の中にはもっと楽しい事がある、あしかの首を折るとか」、「あしかは年に一度くらい
首を折ってやらないと上手く成長できないんだよ。君も喜ぶ、あしかも喜ぶ」なんて言葉巧みに
誘って夜の街へ消えていく話。あしか可哀そうだよ!wでもいろんな誘い方があるものですね。
それを見ていた主人公とバーの主人が「あしかねえ」と感心しながらため息をつくところが好き。
しかしあしかやらアリクイやらが登場する事が多いな村上作品は!村上さんがお好きなのかな。

マット」では、「全国玄関マット・コンクール」という架空のコンクールの選評が書かれている。
しかつめらしいものが多く、村上さんのお嫌いな日本の文壇に対する皮肉の比喩かな?と思った。
もちろん堅苦しい事が悪い訳では無いんだけど、旧態依然としているというか。そんな内容でした。

以上、長いけど今回も大した感想では無いな・・・。まぁ楽しかったから良かった。それではまた。