はいこんばんはRM307です。今週は読書回、今回は太宰治作の「人間失格」の感想を。振り幅よ!
たしか十代の頃に一度読んだ事があるけど、内容をまったく覚えていなかったので読み返す事に。
ちなみに我が家の本棚にあった、母が40年以上前に買った文庫本で読みました。定価140円!w

20190316_人間失格

【あらすじ】
人間を恐れ、他人の前では常に道化を演じていた主人公・葉蔵の凋落していく半生を描いた作品。
作者の経験に基づくエピソードが多く、フィクションでありながらも自伝的な小説とも言われる。
まぁ言うまでも無く有名な作品なので、わざわざあらすじを書くまでも無いんだけど、いちおう。


戦後すぐくらいの頃に書かれた作品だし、古くて読みづらいんじゃないかなと不安だったけど、
比較的読みやすくて大丈夫でしたね。それでも昔の仮名遣いだったり言い回しがあったりして
最初はなかなかエンジンがかからなかったのだけど、半分あたりからは最後まで一気に読めた。
今から70年前に書かれた作品だけど、言い回しはそこまで大きく変わっていないのだなというのも
意外だった。「永遠のテーマの一つ」という表現もあったりして、この頃からあるのか!なんて。
僕は日本の古い文学作品にまったくと言って良いほど触れていないので、新鮮な驚きだったな。

読んでいて最初に思ったのが、不死鳥先生の漢字の使い方ってこの時代の文学作品を参考にした?
という事。僕の漢字の使い方はもともと不死鳥先生の真似だったので、似ている事に気づいたのだ。
(ちなみに今は数年前からつばき先生の使い方も取り入れたりして、だいぶ別物になっているけど)
不死鳥先生がどんな文学を好きだったのかはもう覚えていないけど、案外当たっている気がする。
なるほど、ちょっと変わっているなと思っていたけど、こういうところにルーツがあったのかな。
もしかしたらこの作品も読んでいたのかもしれない、というのは、「パァトス」という単語が
出てきたところで思った。小説「フォルテシモ」に登場するカンジくんが言っていましたね。
燃える!燃えるぜ俺のパァトス!」。一般的な「パトス」じゃなく「パァトス」なのは珍しく、
検索してもほとんどヒットしない。この作品由来のものだったのだろうか?気になるところである。


本当の自分を出す事ができず、常におどける葉蔵。僕も、こと現実においては他人が怖いので、
わりと共感できる部分があるかも、と思って読んでいたけど、やっぱりぜんぜん違っていて。
第一僕はモテないからな!葉蔵とはまったく違う。驚いたというかよくわからなかったのが、
家出して友人の堀木のところに転がり込んだ葉蔵が、堀木にイラストを依頼していた編集者の
シヅ子と出会い、なぜかそのままシヅ子の家でヒモ生活を送る事になったところ。突然すぎる!
初対面のシヅ子に「あなたは、ずいぶん苦労して育って来たみたいなひとね。よく気がきくわ。
可哀そうに」と言われて次の行からはもう同棲していますからね。急すぎて訳がわからない!
何かしてあげたくてたまらなくなる男性としては描かれているけど。すごい魅力があるんですね。

その後葉蔵はそのシヅ子と娘の幸せを壊したくないと思い家を出る事になったのだけど(それも
身勝手な話で、葉蔵を愛していたシヅ子と娘さんが悲しんだと思うといたたまれない)、今度は
バーのマダムに「わかれて来た」と一言伝えたら次の行からはまたそこでやっかいになる事に。
やべーな。その後も薬屋の奥さんと関係を持つ事になるし。すいすいと渡り歩いていく才能がある。
「私を本当の姉だと思っていてくれていいわ」という女性の言葉に対し「そのつもりでいるんです」
と憂いを含んだ表情で答えた事もある。すごいな。美青年にそんな事を言われたらたまらない。
もちろん才能だけじゃなく、眼鏡をかけたところがハロルド・ロイドにそっくりだと言われたら、
映画まで観に行って彼の表情を研究してその真似をして笑わせる、なんて事もしていたので、
かなりの努力もあったのだろう。しかし相手に喜んで欲しいからというポジティブな理由では無く、
薄氷を踏む思いでご機嫌を取るというネガティブな理由でサービスをしていたのだから不思議だ。
僕はそこまでできない。相当追い詰められていたのだな・・・。強迫観念的なところがあったのか。

しかしその魅力は決して良い事ばかりでは無く、最初の方で幼い頃に女中や下男から犯されていた
と書かれている。他人を、両親さえも理解する事ができないから、何を言っても無駄だと思い、
耐え忍んでいたとも書かれていた。詳細については書かれていないけど、ひどい話だな・・・。
これって相当ショッキングな話なのだけど、作中では少ししか触れられていない。葉蔵の内面の
苦しみについてはフォーカスされているのにな。後に「自分の不幸は、すべて自分の罪悪から」
と書かれている。性的虐待や内縁の妻が手ごめにされた事も十分すぎるほど不幸な話なんだけど、
葉蔵にとっては内面の方が重くのしかかっていたのかな。そんな葉蔵がちょっと不思議でした。

葉蔵の内面の妻がけちな商人に犯された後に、そんな妻を許すか許さないか、許して我慢するか、
さっさと妻を離縁して新しい妻を迎えるかなどと書かれているだけど、え、どういう事・・・?
被害者である妻を許すか許さないか、という意味がわからない・・・浮気じゃないんだよ・・・?
許すかどうかはそれは相手の男に対してじゃないの・・・?妻に対してでは無いでしょ・・・?
そんな恐ろしい目に遭って、常におろおろびくびくと怯えるようになってしまった妻を守って、
ずっといっしょに居るのが普通なんじゃないの・・・?どうして離縁するという選択肢が・・・?
まぁ昭和一桁の時代の話なので、当時の考え方がわからず、どうにも引っかかってしまいました。
最初の方に「相手を殺すという事は、恐ろしい相手に幸福を与えるだけ」(この考えもすごいな)
だと書かれているので、相手の男をどうこうしようとは思ってないというのはわかるんだけどね。
その後、結果的に妻も捨てる事になる。ただひたすらに可哀そうだ。あんなに良い子だったのに。

もう一つ嫌だったのが、事件が起きる少し前に、堀木と再び旧交を温めるようになってから
自分が捨てたシヅ子のアパートに泥酔して泊まらせてもらうようになった事。お前どの面下げて!
こういうところがあるから葉蔵に完全には同情できないんだよな・・・。シヅ子と娘が可哀そう。
まぁそもそも、女性の持ち物を質に入れて酒びたりになる時点で同情はできないんだけど・・・。
しかし葉蔵、他人を恐れるくせにお酒や遊ぶ金欲しさに親兄弟に無心できるのはすごいよな・・・。
僕だったらそっちの方が恐ろしくてできないよ。申し訳無いし。僕が貧乏だからそう思うのかな?

その後致死量以上の催眠剤を隠し持っていた妻ヨシ子にショックを受けた葉蔵は、それを飲み
自殺を図る。しかし一命を取り留める、が、苦悩しアルコールに溺れ、アルコールから逃れる為に、
また打っていると身体の調子が良い、仕事に精が出るからと今度はモルヒネに溺れ、だんだんと
打つ量が増えていき、完全な中毒者となる。そして狂人扱いをされて脳病院に入れられた後、
父が亡くなった事で兄たちに引き取られ、田舎で療養という名の廃人のような生活を送る事に。
「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」と書かれて終わる。

葉蔵が死なないと良いな・・・と思いながら読んでいて、退院した時は少しほっとしたのだけど、
最終的には死んだような人生になってしまったなぁ。死ななかったから良かった訳では無かった。
そのうち胸の病気で死んでしまいそうな感じでもあるし。幸せにはなれなかったのだなぁ・・・。
ヨシ子と出会って結婚を決意した時に、葉蔵は「やはりこの世の中に生きて在るものだ、結婚して
春になったら二人で自転車で青葉の滝を見に行こう」と決意する。その後モルヒネ中毒になった時、
「死にたい、もう取返しがつかないんだ、どんな事をしても、何をしても、駄目になるだけなんだ、
恥の上塗りをするだけなんだ、自転車で青葉の滝など、自分には望むべくも無いんだ」と独白する。
めちゃくちゃ悲しい。この感覚はわかると思う。以前自分が投稿したこのツイートを思い出した。
療養生活のお世話の為につけられた老女中からも犯されているというのもひどい。最後まで・・・。

幼い頃竹一に「お前は、偉い絵画きになる」と予言された時、シヅ子に拾われ雑誌のイラストや
漫画を描くようになった時、ヨシ子と出会った時、そのまま幸せになって欲しかったなと思う。
何かが一つ違えば、幸せな未来もあったのかな・・・。いややっぱり、葉蔵には無理だったのかな。
この葉蔵が、著者の姿がいくらか反映されたものというのも悲しい。自殺しちゃったしね・・・。

一番好きだったのは、堀木に「これ以上は世間が許さないからな」と言われた後の葉蔵の独白。
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう?)
ここの書き方良いですね。あと一番びっくりしたのは、最後の葉蔵がまだ27歳だった事。若い!


以上。また気が向いたら他の太宰治作品を読んでみても良いかもしれないな、と思いました。

あと、葉蔵の父が胃潰瘍で亡くなったとの記述を読み、胃潰瘍で死ぬ事もあるんだ!と驚いた。
僕も胃・十二指腸に20個くらい潰瘍ができた事があるけど、知らなかったなぁ。調べたところ、
胃壁が深く傷つけられ太い血管が切れてしまい、大量の出血でショック死する事があるらしい。
1950年代には19000人近くの人が胃潰瘍で命を落としたとの事。そんなに多く?!初めて知った。
今でも痛みに気づきにくくなった高齢者が命を落とすケースがあるらしい。ありふれた病なので、
命の危険があるとは思っていなかったな・・・。みなさまもお気をつけください。それではまた。