はいこんばんはRM307です。今週は漫画回、今回は雨隠ギド作「終電にはかえします」の感想。
甘々と稲妻」でおなじみの作者さんの百合短編集です。今回は珍しく試し読みせずに購入した。
まぁ「甘々と稲妻」の作者さんなら大丈夫だろう・・・と思って。さてどうなるかな・・・?


表紙には女子高生がふたり、裏表紙にはウェディングドレスを着た女性がふたり描かれている。
二年前に新都社本スレでも話した事があったけど、ふたりともお嫁さん、って何だか良いなぁ。
以下は感想ですが、今回もあらすじ部分が多くなっています。じゃないと感想を伝えらえなくて。


一作目の「ひらがな線、あいう駅より」と二作目の表題作「終電にはかえします」では、
ミスコンで優勝し女子アナになって玉の輿を狙う女子高生あさきと、たまたま同じ電車に乗る
ヤンキーちっくな後輩ツネのお話。最初は痴漢避け、暇つぶし、ミスコンの票稼ぎになると
思ってツネと話すようになったあさき先輩だったけど、彼女の普段見せない表情を見てしまい、
ミスコンや玉の輿が吹き飛ぶくらい彼女の事で胸がいっぱいになってしまう。良いですね!

その後、高校を卒業して大学生になるあさきは、ツネに「私以外の友だちも大事にしなきゃ」、
「私から卒業しなきゃ」と告げる。それに対してツネは「いつまでも甘えていたら迷惑っスね」、
「調子に乗っちゃってすみませんでした」と謝る。こう言ってしまう気持ちはすごくわかるな。
僕もかつてずっとそう思っていたし何度も言った事があるし。まぁ今でもそう思っているけど。
その言葉に対しあさきは怒り、自分がツネを好きな事をちゃんとわかっていて欲しいと伝える。
良いなぁ、僕もそう言われたい。もしも僕と関わってくださったひとたちが、そう思っていて
くださったら本当に幸せだろうな・・・。まぁ僕は無価値なので、そんな事は無いだろうけど。
そしてツネが泣き、それを見て「ずっと女子高生で良い、ツネといっしょに居る」と子どもぽく
ぼろぼろ号泣するあさき。ほっこりしますね。でも結局は別々の道を歩む事になるのかな・・・
と思っていたら、(これを)「デートって考えていいんスか?」と顔を赤くて訊いたツネを見て、
あさきは思わずキスをする!唇を離した後の、顔を真っ赤にしてびっくりするふたりが良いなぁ。
最後の「ツネと二人 行き先のみえない電車に乗りました」というモノローグもとても良い。

何だかんだ女の子同士仲が良くなっても、進学して環境が変わればいずれ関係が解消される。
寂しいけど、そこにたしかにあったきらめきは変わらないし、きっと思い出の中でいつまでも
輝き続けるのだろう・・・という話はよくあって、たぶんその方が思春期特有のせつなさとか
美しさみたいなものを切り取りやすいんだろうけど、ふたりが一歩踏み出してくれて良かった!
長編でも無いのに、胸の奥から「結ばれて良かった!」という暖かい気持ちが湧き上がってきた。
そして最初から女の子が好きな百合っ娘の話もちろん楽しめるけど、やっぱり男性が居る中で、
その女の子の事が好きになったから女の子でも相手を選ぶ、って百合はすごく良いなぁ・・・。


このキスシーン以上の爆発力があったのが、「少女プラネタリウム」のラスト3ページだった。
自分の中で生まれたサトウさんへの爆発しそうな気持ち、でも彼女が私の星にならないのなら、
気持ちが死んでしまえば良い。そう思って嘘をつきサトウさんを突き放すスズキさんだったけど、
彼女の涙に思わず抱き締め、嘘だったと謝り、泣きながらサトウさんが大好きだと伝える!
ちゃんと伝えてくれて良かったー!仲直りしてくれて良かったー!と単純に喜んでしまった。
サトウさんもよく頑張ってスズキさんを呼び止めたなぁ。あと不安そうな顔も泣き顔も可愛い。
大粒の涙をぼろぼろと流す表情がとても魅力的だ。僕もこんなふうに描けるようになりたいな。

一瞬のアステリズム」に登場する蝶子は髪がもっさもさ。「甘々と稲妻」のつむぎちゃんを
思い出すなぁ。鷲崎健さんが「つむぎちゃんの髪を梳いてあげて」と言っていたのも思い出した。
でも可愛いデザインだなぁ。ここまで毛量の多いキャラを描いた事が無いけど、興味を持った。
三角関係の三人、このままの関係でいようって結論は面白いな。「おとなが怒りそうな」とある。
たしかにそんなの長く続かない!と言われそうだけど、今の彼女たちにしか出せない結論だなぁ。
僕は年齢だけ重ねた大人とは言えない大人なのでえらそうに言えないけど、それも必要なのかも。

永遠の少女」にもみさおという小さな女の子が登場する。幽霊少女のみずきは彼女と出会い、
みさおだけが自分に触れる事ができ、またみさおが触れるものは自分に「伝わる」事を知る。
それを利用し、みさおはみずきに抱きつく事で、彼女の服を毎日着せ替えるようになった。
くっつけると自分の服と相手の服が同じになるって面白いですね。ずっと病気で入院していて、
生きている間はおしゃれも楽しめず、死んでからも同じ病衣だったみずきは喜んだだろうなぁ。
そんなふうに姉妹のようにいっしょに過ごしていたふたりだったけど、どんどん大きくなる
みさおを前にし、みずきは自分が置いていかれると涙し、彼女から離れる事になりました。
高校、大学、社会人と、成長するみさおを時々見に行っていたみずきだったけど、ある時
みさおがウェディングドレスを着ているところを目にする。みずきはショックを受けるけど、
それはパンフレットのモデルで、みさおは今でもみずきといっしょに生きていたいと伝える。
この「誰とも結婚しない」のページで、はっと気づいた。この単行本を買ったのは一ヶ月前で、
最初に手に取った時の記憶も薄れつつあったのだけど、裏表紙のウェディングドレスのふたりは
みさおとみずきだ・・・!みさおがみずきにくっついてウェディングドレスを着せたんだ!!!
そう思ったらめちゃくちゃじーんとしてしまって、実際に次のページのふたりの花嫁姿を見て
もっとじーんとしてしまった。みさおはみずきを選んで、ずっと待っていたのだなぁ・・・。
そしてラスト、おばあさんになってもみさおはおしゃれをして、みずきに着せ替えてあげて
いっしょに楽しく過ごしているのだった。歳をとってもいっしょに居てくれるの、嬉しい・・・!
ハッピーエンドのその後も、ずっとずっと大好きな関係が続いたのがわかるって良いなぁ・・・。
その前で語られているように、みずきと同級生になったり、いっしょに「生きる」事が叶わず
みさおは当時もその後も苦しい思いをたくさんしただろうけど、最後の笑顔で救われました。

派手なお姉ちゃんの友だちの中で一人だけ浮いている、でもとてもきれいで気になる久我さん。
私の友だちになれば良いのに――素敵な久我さんに髪を梳かしてもらってそんな妄想をする、
中学生(?)のなつが主人公の「大人の階段の下」は、おおっと思う展開が多くて面白かった。
姉のアキの友だちは久我さんを混ぜる事に否定的で、どうして久我さんを呼んだのだろう?
と思っていたら、ふたりっきりの時に久我さんに髪を梳かしてもらっていたアキの表情を見て、
なつは姉もまた久我さんに惹かれているのだと察する。昔から姉と好きなものを取り合いした。
この流れすごく良いですね。「昔っからおねえちゃんとはあわない」がまたここできた!
そんななつは思い切って久我さんに友だちになって欲しいと告げる。そんな妹に怒鳴るアキ。
でも結局はなつの連絡先を久我さんに教えてあげた、最後はいつもちょっぴり優しい姉だった。
そしてラスト、久我さんとアキがキスしているところを目撃してしまい、熱を出すなつであった。
今回も姉と和解して終わるのかなーなんて思っていたら、キスをぶっこんできた!びっくり!
他の短編でもそうだけど、常に僕の(残念な)予想の上を行かれるのが読んでいて楽しかったな。
そして24ページの中に魅力が詰まっていて、ストーリーとしては一番クオリティが高く感じた。
あと単純に髪がさらさらになったなつが可愛かった。ふとんにくるまって泣くところも良いw
ちょっとだけ大人になった彼女。これからも姉や久我さんと仲良くしていって欲しいですね。

少女星図」では、集合写真の欠席者の場所を「アルバムの星」と表現したのが面白かった。
タカハシさん、高校生の時とキャラ違うなwスズキさんとサトウさんとまた会えたのも嬉しい。


以上、どの作品もすごく好き!こういうのが読みたかった!と思える内容でした。それではまた。