はいこんばんはRM307です。今年から始まった映画感想記録、今月は「リズと青い鳥」の感想。
京都アニメーションの「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ作品。約90分のアニメ映画です。
ありがたい事に2日にWeb拍手コメントでリクエストをいただいたので、今回観る事にしました。
実はこの映画感想ではアニメを観る予定はまったく無く、実写作品のつもりでいたんですよね。
だけど、アニメでも良い作品があったら今後も推薦していただけるとたいへんありがたいです。

「響け!ユーフォニアム」は京アニの中では「日常」、「ふもっふ」の次に好きだったんだけど、
一度観たきりで内容を完全に忘れていた。でもコメントでは「テレビシリーズを観ていなくても
まったく問題無い」との事だったので、とりあえず何の情報も入れずに観てみようと思いました。

リズと青い鳥[DVD]
種﨑敦美
ポニーキャニオン
2018-12-05


【あらすじ】
吹奏楽部に所属するみぞれ希美。物静かで内向的なみぞれとは対照的に、明るい希美は
後輩に慕われるパートの中心的な存在。みぞれはそんな希美に特別な感情を抱いていた。
たとえば、足音だけで彼女だとわかるくらいに。しかしみぞれの思いをよそに、希美は誰とでも
一様に親しく接している。それでもみぞれは、希美と過ごせる短い時間を何より大切にしていた。
でも、いつかは希美との別れがきてしまうのだろうか。童話のリズと青い鳥の少女のように――。


真っ先に感じたのは劇伴の良さ。冒頭のみぞれや希美の足音に合わせた曲からもう良い。
そして主題となる「リズと青い鳥」、特に第三楽章は練習曲という事で劇中で繰り返し演奏され、
印象に残る。話が一気に飛ぶけど、通し演奏でその繰り返し演奏されたメロディの先の部分を
聴いた時は、希美のせつなげな表情も相まって少し涙ぐんでしまった。音楽と映像のパワーだ。

京都アニメーション作品なので今さら説明するまでも無いけど、映像、作画が本当に美しいな。
髪の束から一本二本独立した細い毛の表現、体重移動とともに慣性で動くスカートのすそとか、
瞳孔やまつ毛の動き、手や足の芝居とか。細かい。物語に入り込むのに邪魔にならない程度で。
たぶん実写映像だと気が散るな、と思う動きが自然に入っているのがすごいな。さすが・・・。
下駄箱から上履きを落として、横を向いたのを足先で起こす描写とかもすごく自然だったな。
あと表現手法としては、みぞれの「他の子も誘って良い?」という言葉にはっとした希美の前を
生徒が通り、通った後にはいつも通りの表情をしていたシーン、ふたりが同時に一画面に映る
シーンが好き。漫画的なのかな?映画も漫画も大して摂取しない人間なのでわからないけど。
それと驚いたのが、希美が練習中にたびたびみぞれに向かって声を出さずに口を動かすのだけど、
ちゃんと「頑張ろう」って言っているのがわかるんですよね。描くのめっちゃ難しそう・・・。
そういえばテレビシリーズが放送中の時は、あすか先輩の眼鏡の作画が話題になっていたなぁ。

残念に思ったのは、あすか先輩たち3年生が居なかった事。じゃあこれは2期の後の話なんだな。
その上大きなリボンの子(優子)が部長をやっていてびっくりした。意外!そうだったっけ?!
見覚えのあるキャラたち、特にメインだった主人公の久美子麗奈が登場した時は嬉しかったな。
麗奈は言いにくい事をはっきり言っていて笑ってしまった。そんなキャラだったような気がする。
時系列がめちゃくちゃで申し訳無いけど、久美子と麗奈が第三楽章のソロのかけ合いのパートを
演奏していたシーンとその後の笑顔が好きだったな。前作主人公の強キャラ感と信頼が見えて。


そのようにして、みぞれたちの関係の情報がほぼ0の状態で観たので、希美の足音に反応して
顔を上げたみぞれを観てすぐに「これ百合だ!!!」と嬉しくなった。2期ではどうだったっけ。
希美の「みぞれも嬉しい?」とか「大好き」という言葉に反応してしまうみそれが可愛かった。
そうそう!そうなるよね!w自分に向けられたささいな言葉に胸を躍らせて、勝手に失望して。
みぞれと希美の関係、めちゃくちゃ身に覚えがある!!!w僕の今までの人生もこうだった!w
相手は常に日向を歩いているような存在で、相手にとって自分は友人の中の一人に過ぎなくて。
自分にとって相手はかけがえのない唯一の存在だけど相手は違うんだ、とどこか諦めていながら、
それでも消せない感情をくすぶらせている。みぞれはどうかわからないけど、僕はそうだった。
もしかして、リクエストした人はそれをわかっていたのか???と少し勘ぐってしまったけど、
たぶんきっとありふれた話なのだろう。もちろん僕はみぞれのような良い子では無いんだけどね。
それに、みぞれは希美にまっすぐに手を伸ばす事ができた。これは僕にはできない事だ・・・。

「勝手に失望して」と書いたけど、それは期待していたけど得られなかった特別な反応に対して
であって、みぞれが希美自身に失望する事は無かったのかも。最後も希美にハグを求めているし。
その点も僕との違いだな。まぁみぞれは感情に乏しいので読み取れている自信は無いけど・・・。
みぞれは希美が居なくなる事を恐れていたけど、希美の事は信じている気がする。崇拝に近い。
自分に手を差し伸べてくれて、世界を与えてくれて。もともと特別なものがあった訳では無く、
インプリンティングのようなものだったのかもしれないけど、みぞれには希美がすべてだった。
それが失われるかもしれない・・・と思うのはとてもつらいだろう。僕にもよくわかると思う。
いつも不安だった。今でも変わらずその不安はある。実際去年恐れていた喪失はやってきて、
僕のココロをぐちゃぐちゃにかき乱していった。まぁそのへんの話は長くなるので割愛しよう。


劇中では最初、独りだったリズはみぞれ、リズの元にやってきた少女は希美に例えられている。
でも、逆の立場に置き換えたら腑に落ちたのが面白かったな。僕は希美の方が演奏が上手くて、
希美に誘われて吹奏楽部に入部したみぞれの方は希美ほどでは無いのかなと思っていた。なので、
新山先生からみぞれに音大進学の話が出た時には「あれ?」と思い、みぞれが実は希美に遠慮して
ブレーキをかけていたとわかった時には驚いた。無意識のリミッターだったのかもしれないけど。

リズが青い鳥の少女を解き放った後、手にした羽根を握り口元に運ぶシーン、みぞれと同じだな。
第三楽章を通しで演奏したシーンも良かった。透明感のある、みぞれ自身のようなオーボエの音。

演奏後のふたりの会話シーン。こういう告白は好き。でもここ、会話は成り立っているんだけど、
ふたりがお互いに伝えようとしている事が噛み合っていないよね?ぜんぜん別の話をしていない?
ココロは結びついているのに、この時点でふたりの世界は分かたれたようで、何だか寂しかった。
いやわだかまりが解けた良いシーンなはずなんだけどな・・・どうしてそう感じるのだろう・・・。
まぁそもそもがみぞれの片想いだと思うので、噛み合っていないのは仕方が無いのかもしれない。

この時のよそよそしく感じる希美の声が良かったなぁ。東山奈央さんの演技がすごかった・・・。
「みぞれさあ」から受ける硬質な響き、「それよく覚えてないんだよ」の若干投げやりな響き。
中盤の「みぞれ、音大受けるんだよ」の声色も何だか違和感があったな。声優ってすごい・・・。

「のぞ先輩がソロだよね、上手いもん」という言葉を聴いた時の嬉しさを噛みしめる表情、
その後新山先生と話し、彼女がみぞれに熱心に指導している様子を見た時の浮かない表情、
みぞれの殻を破った演奏を聴いて、自分との差をはっきりと感じた時のせつなそうな表情。
僕自身は他人を羨む事はあれど、嫉妬できるほど自分に実力があると思っていない(当然だ)、
そのレベルに至らないのではっきりとはわからないけど、やっぱり悔しいものなのだろうな。
冒頭でも練習が好きだと言っていたしな。それでも腐らず「支える」と言った希美はえらい。
このへんは何となく2のひと先生が好きそう(2のひと先生に実力が無いという話では無く)。


ラストは、画面に背を向けた希美の表情を見て驚くみぞれで終わる。どういう事だったんだろう。
誰とでも分け隔てなく、みぞれにも同じように接していた希美が、この時はみぞれだけに見せた、
その知らない表情に驚いたという事なのかな。みぞれの驚いた顔はとても生き生きとしていて、
瑞々しい輝きをしていたようにも見えた。相当嬉しかったんだろうなぁ。僕も見たかったなー!
すごく印象に残る良いラストだと思った。こんなに想像力をかき立てられるラストは無いよ!

希美と歩く時はいつも後ろにつき、その背中を見ながら歩くみぞれ。希美の歩く道を進むとか、
彼女への遠慮があったりするのかもしれないけど、いつか彼女が隣を歩く事があるのだろうか。
並んで飛んでいた2羽の鳥のように、位置を前後や上下左右に変えながら、ふたりがどこまでも
飛んで行けたら良いなと思う。そしてひそやかだけど素敵な、みぞれの笑顔をたくさん見たい。


と、きれいに締めたいんだけど、希美がみぞれといっしょに居る時間はそう長くは無いのだろう。
思春期のほんのひとときのきらめきなのだ。できればずっと仲良しでいて欲しいんだけどね。

もう一つわからなかった事。何人かが「鎧・・・」と名前を言い間違えるシーンがあったけど、
これはどういう意味だったんだろう?思わずみぞれの名前が口をついてしまうほど、みぞれの事を
考えている人、みぞれの能力を認めている人が実は多かった、という事を示しているのだろうか。

ついでに、いちゃいちゃ言い合いをする夏紀と優子が可愛かった。このふたりも好きなんだ!
夏紀って呼び捨てにすると違和感があるな。夏紀先輩。振る舞いがイケメンだったな・・・。
廊下で立ち止まっているみぞれに手を差し出して教室にいざなった時とか、体育のバスケの授業
でのサムズアップとか。カッコ良い・・・めっちゃ好き。僕もこんな先輩と部活したい・・・。


以上、面白かったです。もっとこのふたりの事を知りたいので、今は観るアニメが多いけど、
いずれテレビシリーズを観返さないといけないな・・・!2期のエピソードを思い出さないと。
まだしばらく先になるかもしれないけど、それが終わったらこの作品も改めて観直したいな。
その時はコメンタリーを聴いて、他の人の考察なんかも読んでじっくりとね。それではまた。

Web拍手

リクエストが嬉しくて頑張ったけど、さすがに大変だったので次からは文量を減らしたい・・・。