はいこんばんはRM307です。漫画回の今週は、井上きぬ先生の「おもちゃとお茶を」の感想。
ハルタという雑誌の72~74号に掲載された一話完結の短編作品です。漫画雑誌を買うのは
去年のハルタオルタ以来で、読み切りじゃない連載誌となると中学生以来だから十数年ぶり。
商業作品を読むのが好きじゃなくてほとんどの連載作品を読まない事になるので、正直雑誌は
買いたくなかったのだけど、やっぱり大好きな作者さんは応援したいしな・・・と思ったので。
3ヶ月に分けて書こうかとも思ったんだけど、文量が少なかったので一記事にまとめました。

【1.幸運の手紙 あらすじ】
寮監のアニーと暮らす人形のレネットは、意思を持ち自由に身体を動かせる。今日も窓から
外を眺めていると、何やら生徒たちが楽しそうに手紙をやりとりしている。笑っているのは
きっと万年筆を持っているからだわ、私もこのペンが欲しい!でもレネットにアニーは言う。
それはペンでは無く、周りの人間に手紙を回せば願い事が叶うと書かれた手紙の影響なのだと。
生徒からの相談も受け困っていたアニーは、万年筆を欲しがるレネットに一つの頼み事をする。

様々なレネットの表情が可愛く、ため息をつく表情から物憂げな表情、とびきりの笑顔まで
ほぼ全コマ魅力的だった。フリルのついたドレスも可愛い(描くのがめんどくさそう・・・)。
最初は頭を悩ませていて沈んだ表情が多いアニーも、彼女を気遣って自分も気落ちするレネット
(素直で可愛いな)を見て以降の、特にレネットから願い事を問われた時の表情、その目元や、
最後の2コマの表情などがとても良かったな。こんなに美人だったんだ。まゆ毛の描き方も好き。

自分が手紙を書いたから生徒たちが笑っている、そう思って喜ぶレネットも可愛かったなぁ。
恐らく普段はこの部屋から出る事ができない存在だから、いつも見ているだけしかできない
アニーの可愛がっている(たぶん)生徒たちを喜ばせる事ができた、というのも嬉しいのかな。
最後に万年筆をもらえるのも良い。そして「不幸になりませんように」というアニーの願い。
それを私が叶えなきゃ、と言ってくれる小さな小さな存在が何より嬉しく、愛おしく感じる。
これからもふたりがずっと仲良くいっしょで、ささやかでも幸せに暮らして欲しいなと思う。

【2.朝の支度 あらすじ】
毎朝アニーを起こすのはレネットの役目。うつらうつらしているアニーの髪をまとめようと
していると、体勢を崩したアニーに潰され腕の関節のゴムが切れてしまった。これでは髪を
まとめられない、私がいないとできないもの・・・と言うレネットに、練習していたアニーは
一人でまとめて見せる。レネットは「これでもう私がやらなくていいのね」とつぶやいた。

腕が取れたレネットがめっちゃ騒いでいるけど、他の人に声が聞かれないかなと心配になったw
僕は女性のまとめている髪型が好きだけど、アニーは下ろした状態の方が可愛く見えるかも。
大手術を想像して青くなったり、足を上げたら転んでしまったりしたレネットも可愛かったw
そうか、レネットはアニーが小さい頃からいっしょに居るのだなぁ・・・こういうの好きです。
ずっとその成長を見守ってきたんだ。大人になっても人形を大切にしているというのも良い。
ラストのレネットも可愛かった。これからもずっとアニーの髪をまとめてあげて欲しいなぁ。

あと465ページのように、僕だったら1、2コマ目をまとめちゃうんだけど(めんどくさいから)、
分けて描かれているのも好き。他の話や作品でもそうなんだけど、この間が萌えるんだよね!

【3.ティーカップ あらすじ】
レネットが窓の外の大声に目をやると、アニーと相手の女性がつかみ合いのケンカをしていた。
動揺したレネットが思わず後ずさると、アニーが使っていたティーカップを割ってしまった。
謝るレネットにアニーは「いいのよ」と制する。ケンカの相手はこのカップを贈ってくれた
相手だったから。カップの破片を胸に「親友だったのに」と悲しそうなレネットを意に介さず、
アニーは「ゴミだから」と捨ててしまう。諦められないレネットはカップを修復しようとする。

大人になってつかみ合い手が出るほどのケンカをするってなかなかだな。何があったのだろう。
殴ったアニーの手を見てレネットが驚くコマ、話はまじめなんだけど笑ってしまったw可愛いw
「大事に思ってるもん」の表情もぷんすかしているところも可愛い。ポットを抱えて机の上に
登れず右往左往しているコマもめっちゃ可愛いwww思い出を再現している様子も愛らしく、
その次のアニーの指で口を塞がれたコマも可愛い。そして前後するけど、ごみ箱から破片を
拾って「よかった」とつぶやくコマ、顔も身体もごみまみれだけど、とても美しいと感じた。

アニーは、778ページのレネットの言葉に不意をつかれた表情が良かった。目のアップも良い。
しかし誰でもすぐに寮監を呼び出せる窓口が備えつけてあるのに、堂々とレネットと話していて
大丈夫なのかなwバレないかひやひやするよ。あと1からこの部屋を訪れる生徒や先生、そして
アニー自身の表情を見ていると、寮監業務が大変な事が伝わる。アニーが浮かない顔をする事が
多いのは、それもあるのかな・・・。大人にはいろいろあるよね。冒頭のケンカだってそうだ。

思い出は永遠だと言うレネット、つらいから昔の事はぜんぶ忘れたいと言うアニー。僕の場合は
他人の思い出に関してはレネットに、自分の思い出に関してはアニーにすごく同意してしまう。

これは「新都社百合企画2020」の漫画を投稿してから新ブログの方に書こうと思っていた話。
僕は昔楽しませてもらっていた作品だったり、仲良くしていた相手だったりしても、それらを
今現在嫌いになったりしたら、過去を全否定したい。その記憶を無くしてしまっても構わない。
たしかにその時はココロを動かされた、幸せだったかもしれないけど、それはもう過去の話、
今となってはもはやどうでも良い、そんなものに時間を使っていた事を後悔してしまう・・・。
僕はこう見えてわりと好きになるものは慎重に選んでいるので、たとえば過去に描いたFAでも、
のちにその作者さんが嫌いになって描いた事を後悔しているケースは88人中2人しか居ない。
今後もしその数が増えたりしたら、その都度FAに使った時間をもったいなかったと思うだろう。
(ちなみに本や漫画をあまり買わないのも、後で「無駄な出費だった」と後悔したくないから)
先日とある作者さんは、「大事に持っていれば良いと思う」と仰っていたけど、僕には難しい。
レネットのように大切に持ち続けようとは思えない。アニーのようにごみは捨ててしまいたい。

冷たい人間ですみません。これってやっぱり悲しい事だよね。他人から見たら特にそうだろう。
なので前述のように、他人が捨てようとしている思い出に関してはレネットに同意できる。
自分にとっても大切な思い出、すでに自分の一部のようになっているものならなおさらそうだ。
ふと思ったけど、これは作品が削除される事と同じだな。作品が読めなくなる事だけじゃなく、
もうその作品は読者の一部にもなっている。だから削除は読者を傷つける行為でもあるのだ。

忘れたいとこぼすアニーに、「代わりに私が覚えてるから」と言ってくれるレネットは優しい。
僕はてっきり「思い出を忘れないで」や「仲直りしなきゃ」と諭すと思っていたのだけど、
そうじゃないんだね。相手との関係が変わってしまうのは仕方が無い。もう戻らないのかも
しれない。それでも代わりに大切にしてくれる存在が居るなら、救われるのかもしれないな。
もちろん、できればアニーには昔のように相手とまた仲良くして欲しい、と願ってしまうけど。
ふたりに何があったのだろうなぁ・・・いつかそのエピソードを読める機会があったら良いな。
いつか彼女が、「やっぱり捨てなくて良かった」と思える日がきたら、僕もとても嬉しいなぁ。

最後はふたりがにこやかなエピソードを読めたら良いなと思っていたけど、このエピソードも
好きです。いつかまたアニーとレネットのお話を読めたら良いなぁ。読み切り作品だと最初から
諦めもつくのだけど、短期でも連載だともっともっとふたりの話を知りたい!と思っちゃうな。
どうか彼女たちがいつまでも幸せでありますように。アニーとレネットに逢えて良かったです。

20200620_おもちゃとお茶を

以上。他には「ヒナまつり」と「ハクメイとミコチ」も読んだ。「ヒナまつり」はアニメより
かなり話が進んでいて、みんな成長していたし、ギャグはあるけどバンド漫画?になっていたw
ライブを成功させたら未来が変わる・・・?!気になるのでアニメ2期をお待ちしております。
あと井上きぬ先生の短編集を出してください。以前描かれた作品も読みたい。それではまた。

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