はいこんばんはRM307です。今月も不死鳥先生の過去作品、「魚眠洞とナナミ」の感想の続き。
今回は3話「魚眠洞とナナミの羅刹」。サブタイトルは文字通り、彼の中の鬼を指すのか。

序文1の感想https://rm307.blog.jp/archives/87732559.html
序文2の感想https://rm307.blog.jp/archives/87820910.html
1話の感想https://rm307.blog.jp/archives/87927829.html
2話の感想https://rm307.blog.jp/archives/88020353.html

【あらすじ】
思うように勉強に取り組めず気が立つ魚眠洞は、気遣うナナミの些細な言葉尻を捕らえ、激昂し彼女の肌に爪を立てる。
加虐心に飲み込まれそうになり彼女を消しても構わないと考えるが、それでも魚眠洞とともにありたいと叫ぶナナミ。魚眠洞の怒りはぎりぎりで途切れる。
しかし彼女は自分が生み出した存在で。自分は他人とは異なるような人種で。
それでもナナミの笑顔と存在は、未来を照らしてくれるように感じた。

ままならぬ人生、他者では無く自身の一部である脳内彼女。恐らく不死鳥先生が過去に経験された悩み、苦しみ。そしてご病気も孤独も知っていたので、当時かなり胸を打たれた。
少し冷めたけど飲み心地が良くなった紅茶も、人生に対する向き合い方や捉え方、あるいはそう思い込みたい願望が表れたりしていたのかな・・・。

そして珍しくナナミ視点の地の文も描写される。
生物にも電気信号にも満たない、Mさんと同じ感情を向けられない、決して魚眠洞の彼女たり得ない自分。
魚眠洞が己の行いを忘れ、衣服の乱れや肌の無事を目にした際もどう感じたのだろう。錯覚とあるけどナナミの記憶からも失われたのだろうか。あるいは魚眠洞が失念してもナナミ側には残るのだろうか。
後者だと自立なのであり得そうにないけど、そんな未来も見てみたいかも。
虐げられ可哀そうだけど、他作品とは異なり怯えたりいじらしかったりする様子も、そして魚眠洞の為を一心に考え、想いを一生懸命伝える様子も愛おしかった。

ナナミの「逃げるのも時には勇気だけど投げちゃ駄目だ」は好きなセリフ。そうだよなぁ。
僕も創作や学校や仕事から逃げてばかりの最低な人間だけど、今のところ人生を投げ出していない点は認めてあげても良いかな。評定が甘いと笑われるだろうけど。
でも他者の場合は全力で肯定し褒める。逃げても構わない、投げ出さなければ、生きていてくれればそれだけでとても嬉しい。

ナナミの語る歪なプライドや、自分への評価に過敏に反応してしまう魚眠洞にも共感した。
魚眠洞の「いくらでも消しても良いんだ」は自キャラへの否定では無く自己否定で、こんな自分の性格が本当に嫌だと強い憎悪が表れていたように思う。
物語世界で動くキャラクターを俯瞰し、思い通りに操る創造主である作者のように、ご自身の性格や考え方も自由に変えたかったのかな・・・。

「人間って一個の生物じゃねーだろ」もたしかになぁ。でもその伝だと、ナナミも魚眠洞を構成する要素の一つ、ふたりで一人の生物にはならないのだろうか?
あと「人間の正体はタンパク質じゃなくて脳内の電気信号」は、後に「絶対加速クレッシェンドQ」第五話でテレ子のセリフとして登場する。こちらも当時の実感だったのかな。
また「投げちゃ駄目だ。投げちゃ駄目だ。投げちゃ駄目だ」は、後に不死鳥先生がブログで書かれたSS(「Q」第九話20ページのプロット)で、チヨジのセリフとして登場する。


ラストの「真昼なのにカーテン閉めてる。そんな人種。自分達は。」の一文と、自然光を背に愛らしく微笑むナナミも本当にぐっとくる印象的なシーン。

ちなみに2017年にラストシーンのFAを描いたのだけど、表情が不正確だとずっと心残りだったので、今回感想を書くにあたり描き直した。
fa20231231

もちろん原作の、ナナミの魅力をまだまだ再現できてはいないけど、良い機会を得られて感謝を。

とてもせつなく、だけど希望の光も見出す。上記のツイートにも書いたけど、個人的には最終話に相応しい話だと思う。新都社で描いたコミカライズでも、もしも続くなら最後に入れ替えたいと想定していた。
不死鳥先生も現在、大切な存在と幸せな光の下にいらっしゃると良いな。もちろん不在でも暗い穴の中でも、お元気でいてくださったらそれだけで何より。
でもナナミが「自分で決めたに違いないし、君はきっとそうするだろうな」と言ったように、きっと不死鳥先生も決意し行動に移されている気がする。

自身が消える未来を示唆するナナミも、今でも不死鳥先生の中に居てくれると良いなと切に願う。見えずとも必要とせずとも、消滅せずに生き続けていますように・・・。
そして僕も会ってみたい。直接は難しいと思うので、作品としてでも。大好きな君の活躍をまた見たいよ。

以上、久しぶりに読み返しましたが良かったです。今年の再読も楽しかった!それではまた。

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