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主に読み返した不死鳥作品や作った料理、他に小説や漫画や同人誌などの感想ブログ。

【読書感想】2022年12月6日 ドールラクガキ本

はいこんばんはRM307です。今週は特別編、11月のコミティア142で頒布された、さとうはるみ先生の同人サークル非・Sugarによるコピーイラスト本「ドールラクガキ本」の感想。
イラストや漫画の設定資料が描かれた全6ページ。


20221206_ドールラクガキ本

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【読書感想】2022年11月2日 ナナミ祭り2022記念本

はいこんばんはRM307です。今週は特別編、7月にTwitterで行われた「幻想水滸伝Ⅱ」の二次創作ファン企画「ナナミ祭り2022」の参加作品が収録された「ナナミ祭り2022記念本」の感想。
装丁や描き下ろされたイラストやノベルティの感想が中心です。収録作品(「#ナナカプ祭り2022」作品以外)についてはページ最後で紹介した月ブログで書いたので割愛します。


20221102_ナナミ祭り2022記念本セット
(撮影とレタッチが下手なので、写真と実物の色味は多少異なると思います!すみません!)続きを読む

【読書感想】2020年12月5日 続あしながおじさん

はいこんばんはRM307です。今月の読書回はウェブスター作の「続あしながおじさん」の感想。
このブログの最初の読書回が「あしながおじさん」だったので、最後はこの作品にしました。
前作を読んだのはもう三年近く前なので、サリーの事はまったく覚えていなかったのだけど。
前作の感想https://rm307.blog.jp/archives/74121454.html

続 あしながおじさん (偕成社文庫4061)
ジーン ウェブスター
偕成社
1986-08-09


【あらすじ】
ジュディの親友のサリーはジュディからの頼みを受け、彼女が生まれ育った孤児院である
ジョーン・グリア―孤児院の院長に就任する事になった。最初は早く後任を見つけて欲しいと
願っていたサリーだったが、意見の合わない「強敵さん」ことロビン・マックレイ嘱託医
サリーを否定する評議員たちと日々格闘しながら、百を超える孤児たちに愛情をそそいでいく。
また同時に、交際していた政治家のゴードンと婚約するが、将来に不安を覚えるようになる。


鷲崎健・千葉翔也 今んとこやや好き」14回で鷲崎さんが「続」の方が好きだと仰っていて、
前作も面白いけどなぁと思って読んだのだけど、たしかにその通りだった。すごく良かった!
前作同様手紙形式を退屈にも感じたのだけど、終盤は夢中で読めたし、もっと読みたかった!
サリーの多忙で、問題が山積みで、けれど満たされる日々をもう読めないのが寂しい・・・。

ジュディと同様にユーモラスなサリーが、最初はうんざりして誰かに任せたいと思いながらも
孤児院の改革に前向きに取り組み、次第に子どもたちの存在が大きくなっていき、院長職を
愛するようになっていった過程が良かったなぁ。「院長をやめたいとは思っていません」、
「どうか、わたしをくびにしないでください」という言葉がすぐに出てきた時は嬉しかったな。
誰と話していても「この人を孤児院にどう利用したらいいだろう?」と考えるようにもなって。
火事の後の手紙で、「これから何年間かのあいだは、勢いづいて働きまわるでしょう」と
書かれていた時は、「結婚をやめて院長を続けるつもりなんだ!」ととても嬉しかったなぁ。
孤児院の子どもたちだけじゃなく、親友のジュディがここで苦しい日々を送っていた事を思い、
彼女の為にも子どもたちを幸せにしたいと頑張っていた友だち想いなところも良かったな。

作中でも書かれていたけど、院長の仕事はものすごくたくさんあるんだよね。その上勉強も
欠かさなかったし、ジュディやゴードンにも頻繁に手紙を書いていたし。すごいしえらいなぁ。
また、ただ仕事に忙殺される事だけに喜びを見出しす訳じゃなく、孤児院にうんざりする時も
あったと正直で、その際はちゃんと休暇を取ってリフレッシュしていたのもすごいなと思った。
休むのも大事だね。これが日本の物語だったら、働き続ける事を美談にしてしまいそうだな。

サリーは子育てをした訳でも大学で教育学を学んだ訳でも無いのに、子どもたちにとって何が
必要かをちゃんと見抜いていてすごいよね。就任する前に孤児についての本を読んだり孤児院を
見て回ったりしたとの事だけど、それだけでよくここまで改善できたなぁ。逸材だったのだな。
就任して最初に自己紹介した時に、ジュディと評議員会の会長である夫のジャービスの名前を
出して、他の孤児院の職員に自分の改革は上の方々からの命令によるもので、自分の軽はずみな
頭から出たものではないとアピールを欠かさなかったのもちゃっかりしているw策士だなぁw

マックレイ先生やミス・スネイスなどへの、最初の印象や評価がいっしょに働いていくにつれて
変わっていく様子も良かった。ミス・スネイスをやめさせたいと思っていたのに、その後は
マックレイ先生に「やめさせるわけにはいかない」と断っていたし。結果的に、あまり換気を
したがらない彼女が居たおかげで火事の際にアレグラが助かったので良かった。上手い伏線だ。

アレグラや兄たちは無事に全員同じ家に引き取られていって良かったな。ただ、三人の子の為に
頑張って亡くなった父親が忘れられそうになっている事が悲しくもある、と書かれていたのも
印象的だった。父親の遺したものが、これからも彼らの中に生き続けてくれたら良いな・・・。

孤児院が火事になって時は本当に肝が冷えて、せっかくサリーがここまで頑張って改善してきた
のに水泡に帰してしまうのか、いやその前に孤児たちの命は?もしここで孤児院が無くなったら
これから子どもたちはどうやって生きていけば良いのだろう?とすごく心配になったのだけど、
避難訓練が役に立ち(ここも伏線だったのか!)、パーシーや年上の男の子たちが頑張って
みんなを避難させ全員が助かり、服などの物も持ち出す事ができ、しかも孤児院の周りで暮らす
大人たちも助けてくれたばかりでは無く、自分の家で子どもたちを一時的に預かってくれたのが
すごく良かった!普段はそっけなかったり好意的じゃなかったりしたのに、いざという時には
こうして助けてくれたのが嬉しかったなぁ。サリーと同様に、人の思いやりと優しさを知った。
そしてサリーが以前から考えていた、子どもたちに暖かい家庭、愛情を経験させてあげたい
という願いも叶って。結果的に火事があって良かったな。もちろん一歩間違えばアレグラや
マックレイ先生は死んでいた訳で、ステリーの事は許せないけど。たっぷり反省しなさいよ!

そして火事があったからこそ、サリーはマックレイ先生への強い想いを自覚できたのだなぁ。
ケンカや悪口もあったけど、ふたりの関係が少しずつ変わっていく様子もすごく良かったな。
微笑ましかった・・・恋愛(最初は違ったけど)って良いな、素敵だなぁ。良いラストだった。
サリーはラブレターを上手く書けないと言っていたけど、最後の手紙はとても良い恋文だった。
僕もこういう手紙を書きたいし、もらってみたい・・・!衝突する事はあるかもしれないけど、
これからもふたりがいっしょに、幸せに暮らし続けてくれると良いなぁ。結ばれて嬉しかった!
もちろん孤児たちも、全員が良い家庭に引き取られて幸せに暮らせるようになりますように。

その他にサリーの手紙で好きだった部分は、ゴードンに謝った後に「これほどみごとに自分の
まちがいをみとめられる女って、ほかにいるかしら?」、南方から送られたジュディの写真への
「わざわざしるしをつけてくださらなくても、ジャービスとヤシの木を、まさかまちがえは
しないわ。ヤシの木のほうが、毛がふさふさしていますものね」、新しい職員を雇った時の
「ターンフェルトさんがきてから、ブタはすごいかわりようです。すっかりきれいになって
(中略)おたがいにすれちがっても、相手がわからないほどです」、マックレイ先生の家政婦の
いじわるなマックガークがまた立ちふさがった場合の「こちらではおしとやかにひと突きくれ、
相手をひっくりかえし、そのおなかをしっかりと片足でふんまえて(中略)いくつもりです」、
歓喜に湧いた大きな太字の「青いギンガム服廃止!」など。読んでいて楽しい良い手紙だった。
あとゴードンへの手紙の「あなたがおしえてくださるもうひとつの方法は、わたしにもわかって
います。でも、それはおっしゃらないでください――ここしばらくはね」という書き方、これは
結婚の事だなとすぐわかる事ができた。直接言葉にせず表現しているのがしゃれているなぁ。

最後に当時の事情で驚いたのが、一般人が使う歯科用の椅子と道具があった事。家庭でも治療を
行っていたんだ!麻酔はあったのかな・・・?もし無かったとしたらつらかっただろうなぁ。
大人もだけど、当時の子どもたちは大変だ・・・。僕だったら生きていけなかったかも・・・。

以上、とても面白かったです。外国の昔の小説を読むのは久しぶりで、ちゃんと楽しめるか心配
だったけど、読んで本当に良かった!この作品の続編も読みたかったな・・・。それではまた。

Web拍手

【読書感想】2020年11月7日 白銀の墟 玄の月 4巻

はいこんばんはRM307です。読書回の今週は小野不由美作の「白銀の墟 玄の月」4巻の感想。
1巻の感想https://rm307.blog.jp/archives/82632252.html
2巻の感想https://rm307.blog.jp/archives/82890451.html
3巻の感想https://rm307.blog.jp/archives/83094246.html

【あらすじ】
戴の朝廷は泰麒を中心に動きつつあり、徐々に民の救済が行われるようになっていった。廃坑の
奥深くに囚われた驍宗は、静かに眠る騶虞と出会いこれを捕え、ようやく暗闇から脱出する。
かつての驍宗麾下たちと再会した李斎たち墨幟は規模を大きくし、王師に対抗できるほどの
人員が集まっていった。そして土匪朽桟を助ける為に友尚軍との戦いに駆けつけた際、ついに
驍宗と再会する。後は驍宗と雁に渡り助力を願い、阿選を斃すだけ――。順調に思われたが、
阿選の前に次々と失われていく命、囚われる驍宗。もう誰も驍宗を助け出す事はできない――。
李斎も泰麒もすべてを諦めるが、それでも身命を賭して驍宗の、民の、戴の為に最後まで抗う。


驍宗の居場所がわかり、李斎と阿選、どちらが最初に接触するのかと思っていたら、騶虞を
手懐けて自分から出てくる驍宗。すごいwさすがは王だ。騶虞を手懐ける為の段取りが細かく
描かれていて、これだけ説得力のあるプロセスを想像するのすごいな・・・と改めて思った。
驍宗一人でも懐柔できたし、すぐに甘えてきたし、羅睺は元から人懐っこい子だったのかな。
李斎たちの驍宗との再会シーンも良かったなぁ。泣きじゃくる静之泓宏が微笑ましかった。

非合法な存在である土匪で、国を取り戻した後は敵になる朽桟たちとの関係も良かったな。
彼らの窮地に駆けつけた李斎たちに「莫迦か」と言いながらも鼻の奥が熱くなったシーンが
特に好き。最初は露見するのは得策じゃない、助けるのはやめた方が良いと思っていたけど、
結果的に驍宗と再会するキッカケになったので僥倖だった。以前の感想で李斎はもう少し自分を
抑えて欲しいと書いたけど、その熱い性分で運命が良い方向へ動いたのだな。その後墨幟として
いっしょに戦う事になった経緯も良かった。少しずつ味方が増えていくのが嬉しかったなぁ。

友尚も、阿選の麾下だけど道理がわかっていた人物だったし、阿選の口封じの指示や烏衡らに
よって苦しい思いをしていたのを不憫に感じていたので、墨幟に寝返ってくれて嬉しかった。
阿選に従っていた兵たちも、決してその残虐なやり方を支持していた訳では無かったのだな。
あと友尚の、相変わらず服を脱ぎ散らかすくせも描写されていて良かったwユニークだなぁ。
驍宗の元へ行く際の、弦雄との軽妙なやりとりも良かった。そして「我々麾下の務めだ」という
セリフ。阿選に背き討とうとしていても、麾下だった事は今でも否定していないのだな・・・。

霜元の「阿選に手が届いた」から希望を見出せたのに、中盤以降どんどん味方が死んでいき、
あれだけ居た墨幟がわずかな人数になっていったのが悲しかった。名前のあるキャラも、特に
鄷都の死や生死不明になった静之が悲しかった・・・。鄷都は最初期から、たった数名の頃から
ずっと李斎たちと戦い続けてきたのに。あと少しで平和な日々に還る事ができたのに・・・と。
静之も驍宗と目されていた人物が亡くなった時にあれだけ後悔したり、再会できた時にあれだけ
喜んだり、囚われた驍宗の事も最後まで想い続けてついに救えたりしたのに・・・と。つらい。
葆葉、朽桟、梳道、高卓戒壇勢や牙門観勢や檀法寺勢も・・・。名前の無い兵や土匪も数多く。
まだ戴には不羈の民がたくさん残っている事が嬉しくて、味方が増えて心強く思っていたのに。
李斎の騎獣の飛燕も、慶までの苦しい旅を耐え抜き、幾多の危機も乗り越えてきたのに・・・。
泰麒も再会できずに悲しかっただろうな・・・。騎獣だけど、動物が死ぬ展開はやはり堪える。
泰麒を支えた恵棟も、3巻であんなに感動的なシーンがあったのに、文州候として驍宗たちを
助けられるようになったと思ったのに、阿選により病んでしまって・・・とても悲しかったな。
そしてついに泰麒が阿選に面と向かって欺瞞を指摘されて。はらはらする怖いシーンだった。

直接驍宗を手にかけるのでは無く、簒奪者と偽って民の前で謝罪させ、民の手で処刑させる。
これまでの苦難はすべて驍宗の所為だったと思わせるなんて。よくこんな方法を考えるな・・・
と作者が恐ろしくなった。しかも李斎の言うように、のちに阿選が偽王だと露見した時に民は
自分たちの手で正当な王を殺した事になる。これほど強いショックは無いだろうからな・・・。
しかし阿選はいずれバレるだろうに、自ら驍宗を殺しても結果は変わらなかっただろうに、よく
この案作の奸計に乗ったなぁ。この頃になるともう目先の事しかわからなくなっていたのかな。

「これはあんまりです」、「驍宗様が王なのに!」と子どものように叫ぶ静之のシーンも良い。
それ以上に絶望したのは、己の無能さにだったと思う。自分でどうにかできたかもしれない、なのにその機会を自らの無能でみすみす逸した、と認めることの絶望、自分への侮蔑と嫌悪――憎しみ。誰が許しても自分だけは自分を許すことができない、というあの腸が捻じ切れるような気分。
特にここに共感した。今は詳しく書けないけど、僕もすごく自分に当てはまる出来事がある。
毎回アクセス数の少ないこのブログを、もしかしたら僕と交流のある方は誰も読まないかも
しれないけど、もし良ければ覚えていて欲しいと思う。いつか語れる日がきたら良いな・・・。
共感というと、鴻基に入った時に李斎がその美しい景色を見て、自分の気分や状況と関係無く
世界が美しくある事に衝撃を受けるシーンも。僕もよく死にたいと思った時にきれいな空を見て
感傷に浸っていたので。よく言われる事だけど、自分の存在なんて本当に無意味でちっぽけだ。

でも絶望的な状況になっても、まだ英章たちが居る!最後は泰麒が麒麟の力を取り戻すはず!と
信じて読み続けていた。それまでにあと何人失われるのだろうかという不安はあったけど。
以前の記事で「泰麒にも戴の民の血が流れているのだとわかる」と書いたような気がするけど、
最後の展開はすごかったな。まさか本当に剣を振るって人を殺傷する事ができるとは・・・。
精神力の強さ。その所為で、今後一生不調が続くほどの穢瘁が残ってしまったのは悲しいけど。
ただ使令が戻ったのは良かったなぁ。あれだけ泰麒を想っていた汕子が戻る事ができて嬉しい。
また今は汕子と傲濫しか居ないけど、今の強靭になった泰麒なら、使令の数をもっと増やせる
かもしれないし。まぁ使令が必要な場面が無いのが一番なんだけど。でもそうはいかないかな。

鴻基から逃げる驍宗たちの元にかつての麾下が次々に集まって、集団がふくれ上がっていく。
兵の顔と名前をよく覚えている驍宗だからすぐにわかる。以前語られていたその設定がここで
回収されるとは!その様子や、これまでの驍宗と麾下たちの関係の描かれ方を見ていると、
驍宗と阿選、似た者同士だと言われていてもその器の大きさがまったく異なる事がよく伝わる。
最初から阿選が天に選ばれる事など無かったのだ。昇山しても王にはなれなかっただろうな。

阿選の度重なる誅伐の所為で、誰かが阿選に逆らった→この場に居たすべての者が虐殺されると
判断した民が押し寄せて門を閉ざせず、墨幟が逃げる道を作ったというのも皮肉でとても良い。
各州候を傀儡にした事で乱を未然に防ぐ事もできなかったし、阿選は最終的に自分で自分の首を
絞める事になったのだなぁ。ちなみにこのシーンでの阿選「なぜだ」→臥信「――なぜなら」、
「虚仮威しだ」→「――虚仮威しなんですけどね」と、両者のセリフが同時進行で、臥信
セリフが阿選の言葉を受けたかたちになっている表現が珍しくて面白かった。映像的な印象。

ここまでが苦しかった分、ラストは痛快だったけど、残念だったのは阿選の最期を見る事が
できなかった点。あれだけ描写されていたんだから、その死も描写して欲しかったなぁ・・・。
まぁ驍宗と泰麒に逃げられた後の彼は一気に小物臭が漂っていたので、わざわざ描くまでもない
という事だったのかもしれないけど。それでも、張運や烏衡のようにその凋落も見たかった。
張運は小物ゆえに最後まで泰麒の障害になりそうだと思っていたら、あっさりと失墜したな。
更迭した内宰の証言が効いたな。自分の奸計に溺れて。案作の独白の伏線回収だ。自業自得!w
最後に阿選に手紙を書き、いつも憤っていた「聞いた」という返答だけが返ってきたのも良いw
しかし張運を本人にも気づかれず操っていたのが案作だったとは!彼の最期も見たかったなぁ。
烏衡も賓満をつけてもらって強くなっただけだったのに、阿選に対してあんな振る舞いを続けて
いたら簡単に討たれるよ。もっと惨く殺して欲しかったけど、まぁ無事に死んで嬉しかったな。

そういえば2巻で泰麒と阿選が最初に対峙した時の事について。叩頭、契約をさせればすぐに
露見したのにそれをさせなかった、泰麒を守ったように見える琅燦には何か意図があったんじゃ
ないかと思っていたけど、それは泰麒もわかっていたのだな。耶利の主人かはわからないけど。
玄管と呼ばれる王宮から沐雨や李斎に青鳥を飛ばしていた人物は、僕も琅燦じゃない気がする。
キャラが違うよね。考察コメントにもあったけど、登場していない冬官長だったりするのかな。
僕は基本的に考察サイトを滅多に見ないのだけど、今回は主に琅燦についてわからない部分が
いくつかあったのでいくつか見て回った。特にこの記事とコメント欄が一番参考になりました。

そうか、いずれ謀反を起こしたであろう阿選、その場合簡単に泰麒の命を奪えたから泰麒の角を
斬り驍宗を幽閉させる事が驍宗の命を永らえさせる道につながったのか。なるほど!面白い。
あと正頼が裏切り者じゃないかと考察していた人は結構たくさん居たみたいだった。良かったw
混乱の中、無事に助け出されて本当に良かったな。早く元気になって戴を一層支えて欲しい。

考察記事を読んでいて、天意というものを改めて意識した。土匪に逆らった定摂たちの里が
反撃に遭い、李斎たち一行が一度は助けたものの先を急いだ為か、驍宗は捕えられてしまった。
ここに天意が働いていたのは気づかなかったな・・・この判断で一度は失いかけていたのか。
天とは何だろう。この作品でもその答えは出なかったな。最後まで出ないのかもしれないけど。
でもとても気になる・・・。試してみたくなる琅燦の気持ちもわからないでも無いな・・・。
そのの里を助けたのも、墨幟のはくしに加わる

尚隆に助力を願い、「その瞬間、戴の命運は劇的に変わった」という一文を読んだ時は本当に
心底安心した!これでやっと救われるのだと。延麒と尚隆が登場した安心感はすごかったな。
自ら他国に訪ねてきてくれる大国の王と宰補、ありがたすぎる・・・。しかしこのふたり、
シリーズの出演率が高いなw陽子よりも出番が多いんじゃw大好きなので、逢えて嬉しかった。

花影も生きていて李斎と再会できて良かった。あと帰泉の最期は、品堅に教えてあげて欲しい。
それと気になるのが、江州城を制圧する際に大きな助けになった江州の春官長、彼(彼女?)
にも何か物語がありそうだ。玄管の正体と同じく、いつかどこかで語られて欲しいな・・・。

ラストで好きなのが去思項梁の会話。戦いにおいて多くの犠牲は目に見えない場所で起こる。
生きているかもしれない、生きていて欲しい。宙ぶらりんの気持ちを生涯抱えていく・・・。
これはネットでの関わりも同じだなと思った。更新が止まった、削除出された作品、作者さん。
気になってもその後どうしているか知る術は無い。僕も宙ぶらりんの気持ちのまま生きている。


驍宗や泰麒たちはこうして国を取り戻した。しかし何度も書いたように、失ったものは大きい。
本当に大きすぎる・・・。もし阿選の計略が失敗して、あのまま平和に国を納める事ができて
いたらと思わずにはいられない。もしかしたら、その場合は苛烈な驍宗と弱気な泰麒のままで、
他に問題が起きて結局上手くいかなかったのかもしれないけど。仮にそうだったとしても、
ここまでの犠牲が出る道しか無かったのかな・・・と思ってしまうな・・・難しい・・・。
仮の話をすると、阿選の言うように彼が李斎ともっと早く出会っていたらどんな話をしたのか、
というところにも興味があるな。もしかしたらそこで阿選の運命も変わっていたかもしれない。

定摂や帰泉や品堅、名も無い貧しい一家など、様々な視点の物語が一本により合わさっていき、
大きな流れにつながっていく様が見事だった。李斎が言った、過去に積み上げた小さな石が
いつのまにか大きな結果をもたらしたように、それぞれの想いが大きな未来を作っていった。
こんなに壮大なストーリーを作れるの、すごいなぁ・・・。本当に小野先生は素晴らしい。
15年以上待ち望んだ物語を読む事ができて本当に嬉しかったし楽しかったけど、物足りないと
思うところもあって。再会した驍宗と泰麒の会話をもっと読みたかった!!!数少ない会話も
とても印象的で、だからこそより美しさが引き立つのだという意見もわかるんだけど・・・。
平和になった戴での彼らの様子が知りたかったのだ・・・。戴の話はこれで最後だろうから。
いやでも、常に平和などはあり得ないのかもしれない。戴史乍書では阿選が討たれたと
記されて終わっているけど、本編ラストではかすかに戦乱の予兆を感じさせて締められている。
国を納め続けるのも戦いで、それはこの先もずっと続いていくのだという事なのかなと思った。
でもやっぱり、「冬栄」のように一時でも日が差し込んでいる話を読みたかったな・・・と。
使令に戻った汕子、傲濫とのやりとりや、助け出された正頼、再会した李斎とのやりとりも。
これで泰麒たちとお別れかと思うととても寂しい・・・また短編などで読めないかなぁ・・・。

最後にかなり台無しな話を。利公も言っていたけど、終わらない王朝は無い。驍宗の王朝も
いつかは終わるだろう。もし今後驍宗が失道するような事があった時に、泰麒や麾下たちは
これだけの想いで、たくさんの命を失って驍宗を救った事を後悔するんじゃないだろうか・・・
と思った。あの時そのまま死なせていれば、後の戴にとっては良かったのかもしれない・・・
というように。そうなったらめちゃくちゃ悲しいな・・・。なので驍宗、良い王になってね。
泰麒も不調が残っていると思うけど、これからは幸せに生きられますように。李斎もずっと
驍宗たちを支えて欲しい。項梁も園糸たちと再会できると良いな。去思も平和な国で、
立派な道士として民の暮らしを守っていって欲しい。他の墨幟のメンバーも、土匪たちも。
戴のすべての民が救われ、みんなが安心して幸せに暮らせるようになりますように・・・!


以上、今作を読む為に去年の9月から少しずつ読み返していた「十二国記」シリーズでしたが、
一年以上かけてついに今回で終了!楽しかったなぁ。また最初から読み返しても良いぐらいだ。
小野先生は過去にインタビューで長編の続編はもう書かないと何度も仰っているようだけど、
もっともっと読みたいよ・・・!また陽子や泰麒たちと会いたいなぁ・・・。それではまた。

Web拍手

【読書感想】2020年10月3日 白銀の墟 玄の月 3巻

はいこんばんはRM307です。読書回の今週は小野不由美作の「白銀の墟 玄の月」3巻の感想。
1巻の感想https://rm307.blog.jp/archives/82632252.html
2巻の感想https://rm307.blog.jp/archives/82890451.html



【あらすじ】
泰麒は膠着状態を打開する為、阿選の六寝に侵入を試みる。その途中で気づいた東宮の様子。
そこに囚われた正頼が居るのでは。深夜、泰麒は項梁耶利とともに地下から東宮に向かった。
予想通り囚われていた正頼と接触し、国帑のありかを聞いた項梁は王宮を抜け出す事になった。
しかし正頼を助け出す事は叶わず。苦しむ泰麒だったが、民を思いすぐに毅然として前を向く。
一方李斎たちは石林観の主座沐雨から、驍宗が身罷っていない事を聞かされる。また密かに
驍宗を捜索し、阿選に対抗しようとしている民や勢力が多い事を知り、もう一度希望を抱いた。
そしてついに驍宗の居場所に目星をつける。時同じくして、阿選も麾下を驍宗の元に派遣する。


冒頭で項梁の泰麒への疑念が晴れる。泰麒が祈っていたのは阿選では無く、文州に居る李斎や
驍宗だったんだね。味方をも騙せるぐらい泰麒の演技が上手かったという事なので結果良し!
しかし李斎が阿選と通じていた可能性すらも考えていたとは!そこまで用心深かったのだな。
王宮に戻ったのも、早く民を救いたいと逸る気持ちだけでは無く、驍宗を王宮の中から捜す事、
自分の警護に労を割かせない事などの理由もあったのか!めちゃくちゃ考えていてすごい!
泰麒のすごさについては耶利や琅燦も舌を巻いている。外界に開かれていたものが閉じられる、
内面を見せず閉ざす術は、蓬莱での苦しい日々に身につけたものだから複雑だけど。悲しい。

この巻では「魔性の子」に関する記述が多くて嬉しかった。それはすなわち泰麒が苦しんでいる
シーンでもあったから複雑だけど。東宮に忍び込み、兵士と相対する際に広瀬先生を思って
「先生」とつぶやき勇気を奮い立たせたり、阿選に誓約を迫られた時にかつて同級生たちから
土下座を強要され、その為に彼らが屋上から飛び降りた事を思い出したり。これまでの巻では
語られる事は無く、十二国の世界に戻った事で過去を振り返らなくなったのかとも思ったけど、
泰麒の中では決して過去では無いのだな・・・。思えば、読者からしたら「魔性の子」から
新刊までは30年近く経っているけど、泰麒は十二国の世界に戻ってきてまだいくらも時間が
経っていないのか・・・うっかり失念してしまっていた。それでも民を想い、その救済の為に
前を向き続ける泰麒は本当にすごい。殺されるかもしれない正頼を残し、館に戻る時の表情も。
計り知れない精神力の強さだな・・・。兵卒を殺す事ができず、項梁に「甘い」と言われは
したけど、これは性格じゃなく麒麟だからどうしようも無いと思う。項梁は叱らないであげて。

囚われて、拷問されていた正頼。阿選に通じている可能性もあると疑っていたごめんよ・・・。
六年もの長い間、殺される手前の壮絶な苦痛を毎日与えられていたなんてひどすぎるよ・・・。
その上脱走しようとした咎で、今後さらに痛めつけられる事になるなんて・・・惨い話を書く。
殺される前に、すべてが解決して何とか救い出されて欲しい・・・。阿選、絶対に許せない。
正頼に接触した後、泰麒の居る館に阿選が現れた時は、耶利同様読んでいて僕もびっくりした。
さすがに頭が良い。阿選自身が天意を疑っているから思い当たったという事もあるだろうけど。

阿選が驍宗に背いた理由も明かされた。そんなに驚くような事は無かったので少し残念だった。
驍宗と比べられたり自分が影のように思えたりするプレッシャー、軍を退いて野に下る事は
できなかったのかなぁ。まぁ驍宗にはそれができただろうけど、阿選にそれは難しいか・・・。
驍宗でも、一度は泰麒から天意を得られなかった時、「王になる者如何では玉座を掠め取ろうと
思わないとは限らない」と言っていた。王になる人物でもそう思う事があったのだな・・・。
驍宗と阿選は似ていると言われる事もあった。ならば似ている、けれど王たり得ない阿選が
ずっと驍宗に仕え続ける事はどだい無理な話だったのか。泰麒への「嫉妬に触れなかったのは、
私に対する気遣いか?」というセリフはしびれるなぁ。阿選にじゃなくて小野不由美先生にね。

泰麒の角だけを斬る事、驍宗を殺さず幽閉する事は結果的にそうなったのでは無く、最初からの
狙いだったのか。角を封じれば良いという事はあくまで結果から導き出せる答えであって、
月の影 影の海」でも景麒塙麟に角を封じられてはいたけど、それは麒麟だから、麒麟の
事情がわかっている塙麟にだからできた事で、それ以外にできる術は無いと思っていたけど、
琅燦の存在が狂わせたな・・・ここまで詳しいとは。天の摂理を試す事が目的みたいだけど、
阿選に大逆をそそのかすだけじゃなく、その計画や幻術や妖魔を提供するなど、完全な共犯者
だったのか。2巻で軽くそのようだと触れられていたけど、ここまで深く結びついていたなんて。
厄介すぎるし、琅燦に対する怒りも湧いてきた。阿選といっしょに報いを受けて欲しい・・・。

王が斃れていないのに妖魔が蔓延っていたのも、阿選が使った妖魔が同族を呼び寄せたから。
なるほど!長年の謎が解けてすっきりした。謀反の疑いがあれば何も残さず殲滅するのも、
傀儡ゆえの機械的な行動だから。こちらも腑に落ちた。読んでいた当時はこの世界に幻術が
存在すると思っていなかったからなぁ。最初は世界観を壊さない?と心配だったのだけど。
あと黄海で採れるらしい先が光る木の棒、これはまんま懐中電灯だなwこんなに都合の良い
アイテムを出して良いのだろうか?wでもだからこそ、これは蓬莱や崑崙に存在するものを
十二国の世界を作った存在が真似て作った、という可能性がより感じられるようになったな。
人の魂魄を抜く妖魔次蟾。2巻で出てきた謎の鳩の声はこれだったのか。その所為で淶和
平仲徳裕は病み、ある程度病が進んだらもう元には戻らないという。可哀そうに・・・。

そんな中で巌趙が大僕として泰麒を助けてくれる事になったのは良かったな。駆けつけた巌趙に
応対した、前の巻から登場している阿選の麾下の兵卒駹淑が気になる。何か役割がありそう。
2巻の感想でも書いたけど、阿選の麾下にも良い人は居る。巌趙や、かつての巌趙の麾下杉登
気遣ってくれた品堅。そして泰麒に仕えて信頼を得て瑞州州宰になった恵棟。恵棟は、非道の
限りを尽くした阿選が王になる事が納得できなくて職を辞そうとした。ただそれは阿選が麾下を
拒絶し、その想いを踏みにじったからというのが人間らしい。「黄昏の岸 暁の天」の感想で
「なぜここまで非道を行う阿選に麾下は追従するのか?人の心があるはずなのに」と書いて、
1巻からも主人と麾下の関係が描写されていたけど、ここで一つの答えが出たように感じた。


李斎パートでは、死んだ武将は驍宗では無く基寮だったという事もわかる。髪や目の色が驍宗と
一致していたからおかしいなとは思ったけど、これは老安の民の嘘だったのだな!どうりで。
薬を盛っていたというのも、毒薬じゃなく本当の薬だったという事で良かった。死んだ基寮、
傷が治りきる前に無理をして倒れる事を繰り返したのがな・・・ちゃんと養生して欲しかった。

葆葉のように実は戴の事を考え、密かに行動している民が多いとわかったのが嬉しかったな。
轍囲の民も白幟として、救われたのは自分が生まれるはるか前の出来事なのに、驍宗を思い
捜し続けていたし、李斎が慶に転がり込んだ時、戴の命運は尽きる間近のように思われたけど、
不羈の民がたくさん残っていたのだな・・・。まだまだ戴に希望はあるのだ!と心強く思った。
土匪にも朽桟のように、一見敵や悪人に見えるけど実は事情があったり道理がわかっていたり
する人物も居る。ただ、だからといって土匪すべてに考慮すべき事情があるとは限らないし、
人出が足りなくなると里を脅して人を連れて行き、使い捨てる者たちは同情に値しないけど。

高卓に至る厳しい道のり。僕は以前から過酷な修行をする宗教に対して疑問を抱いていたの
だけど、そこまでしなければ削ぎ落とせない邪念がある、という考えもあるのだな・・・。
それにしても、その過程で命を落としてしまうなんて意味が無いと思っちゃうけど・・・。
そして潜伏していた同志たちと再会!こんなにたくさんの味方が生き残っていたのだな・・・!
出発した時は三人、それが六千以上の人数になった。熱い展開。文州城を攻略できるだろうか。
ただ順当に驍宗とともに城を落とし反旗を翻す、みたいな展開にならないような気もするけど。


そしてついに驍宗の描写が。1、2巻に登場し、姉が亡くなった貧しい一家が流した供物が驍宗の
元に届き、その命を救っていたのもすごい・・・。貧しい一家がそれを知れたら良いな・・・。
そうすれば少しは一家も救われるだろう。どうか厳しい冬を越え、生き残って欲しいと思う。
驍宗はやっぱり阿選が裏切るだろうと思っていて、罠だとわかっていて出兵したのだな・・・。
阿選が妖魔を使うとは予想できなかっただろうし、侮りや慢心があって仕方が無かったのかも。
生き残り、折れて皮膚を突き破った脚の骨を無理やり接いだ描写はめちゃくちゃ痛そうだった!
切開するだけでも痛いのに・・・!こちらも精神力が強いな!正しく戴の王って感じがする。


さて阿選が朝に戻り、泰麒の周りにも人が集まり出した中で、窮地に立たされた冢宰の張運
上位の者を蹴落とす為の「過剰な忠義」作戦や、嘘で塗り固めているうちに事実を捻じ曲げ、
自分に都合良い認識を持つという、現実の人間にも多く居そうなパターンの小物っぷりを晒す。
丕緒の鳥」にも淵雅という矮小な人物が登場しましたね。どこの世界にも居るのだな・・・。
最終的に周りに蹴落とさせる「過剰な忠義」は特に厄介だ。でも泰麒には通じなくて良かった。
「新王阿選は泰麒の欺瞞だ」という主張がかえって驍宗が王である事を後押ししたのも面白い。
しかしきっとやられっぱなしでは無いよな・・・阿選や琅燦よりも障害になりそうな気がする。


以上、面白かったです。次回はいよいよ最終巻!どういった結末になるのか・・・実はキャラの
名前をコピペする為に検索した時、うっかり不安になるネタバレを見てしまった・・・心配。
誰も失われる事無く、幸せな結末を迎えて欲しい・・・読むのが怖いな・・・。それではまた。

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【読書感想】2020年9月5日 白銀の墟 玄の月 2巻

はいこんばんはRM307です。読書回の今週は小野不由美作の「白銀の墟 玄の月」2巻の感想。
1巻の感想https://rm307.blog.jp/archives/82632252.html

【あらすじ】
項梁と王宮へ戻った泰麒は偽王阿選と対面し、彼を新王だという泰麒の欺瞞は受け入れられた。
これで州候の任を果たせると思っていた泰麒だったが、待っていたのは事実上の軟禁だった。
一方李斎たちは函養山周辺で驍宗を捜索していたが、一向に何の手がかりも得られずにいた。
代わりに知るのは王の不在による戴の民の厳しい現状。そんな中で阿選が践祚するという噂を
聞く。あり得ないと驚く李斎たちだったが、同時に聞いた情報はもっと驚くべきものだった。
驍宗が亡くなった。李斎たちは間に合わなかったのか。そしてこれからどうすべきなのか――。


僕はこの作品を読むまで、きっと驍宗を探し出し、直接的では無いにしろ阿選を斃して玉座を
取り返す、そしてハッピーエンドな物語になるだろうとどこか当たり前のように思っていた。
しかし実際は、泰麒は王宮へ戻る、驍宗と思われる人物は亡くなったと、驚く展開が続いた。
言うまでもない当然の事だけど、やっぱり僕なんかの予想は簡単に上回る面白さだな・・・!

しかし実際に驍宗が死んだとは思えない。辻褄は合っているけれど齟齬が生じているというか。
謎の人物の遺物は驍宗のものでは無かったが禁軍のもので、容姿も振る舞いも驍宗を思わせる。
ただ、亡くなったタイミングと泰麒が一行を離れたタイミングは合致しているけど、恐らく
泰麒は王気を感じる事ができないし、泰麒も自身の発言は方便だったと白状しているので、
これは偶然かもしれない。しかし泰麒は阿選に王気を感じたと発言し、驍宗の気配も感じると
発言している。そして阿選を憎んでいるような素振りが無く、祈ってさえいるように見える。
でも驍宗を禅譲させる為に王宮へ連れてこさせようとするのは、とても良い手のように思える。
というように、一方を信じたら一方に違和感が生まれ、どこか一貫していないんだよね・・・。
まだ判断できない。というかやっぱり、驍宗の死を信じたくないのだよな。泰麒とまた再会して
国を治めて欲しいし、阿選に天命が下るなんて信じたくない。物語的にもハッピーエンドには
ならないし。でもメタ的な話をすると、4巻の表紙が阿選ぽいのが気になるんだよなぁ・・・。
風の海 迷宮の岸」でだったか忘れたけど、麒麟は相手を憎んでいても天命には逆らえないと
書かれていてずっと気になっていた。ここで回収される為に張られた長年の伏線だったのかな。

ほとんど人の前に姿を現さない阿選は、実はすでに王宮には居ないのでは・・・?なんて予想も
していたけど、居る事は居るんだな。無気力な彼は普段は何をして過ごしているのだろうか?
泰麒の腕を斬ったシーン、もっと浅く斬れよと腹が立った。まぁもともと泰麒を殺そうとした
(それとも角だけを斬るつもりだった?)し、そんな優しさは持ち合わせていないか・・・。
正頼も囚われて拷問されているのか・・・キツすぎる。もしかして阿選に通じているのでは、
と思った事もあったけど、実際はどうなんだろう。拷問されていないなら、その方が良いけど。

そんな中で琅燦の立ち位置がまったくわからない。「黄昏の岸 暁の天」の時点で何か裏がある
人物だと思っていたけど、阿選に粗雑な口を利いているけど対立はしておらず、対等なようで、
驍宗には敬称をつけているけど実は阿選に簒奪をそそのかしたのでは無いかとも目されている。
天の配剤に触れた部分も興味深かった。禅譲した後に死ぬまで猶予がある事も知らなかったな!
その行いが教条的と言われる天が天命を革める場合は、以下の二つしか無いと考えられている。
  • 王に非があって失道にあたると判断される場合
  • 自ら位を降りた場合
だから非の無い驍宗は失道にあたらないので、天命を変えられない。なるほど、面白いなぁ。
以前も書いたけど、このへんは明確なシステムが働いているよなぁ・・・。だからこそ、僕は
琅燦の言う通りに天が動いたとは考えられない。あくまで教条的に動くのであれば、このまま
天は戴を放置していたような気がする。その方が一貫しているように感じるんだけど・・・。
あとこのくだりで一番気になったのは、阿選は実は驍宗を弑するのに失敗した訳では無い事。
殺すつもりは無かったのか?では今の状況を作り出す事が阿選の目的だったのか?何の為に?
そして琅燦の目的はいったい・・・。一連の流れから、天を相手取り天を試したいのか・・・?
阿選が天に選ばれないもう一つの理由も気になるな・・・それをなぜ琅燦が知っている訳も。
あとは耶利の主も気になるところだ。彼もまた、阿選が王になる事は無いと断言している。

泰麒を取り巻く人々、その中で恵棟は阿選側の人間だったけど好感を持つ事ができた。泰麒と
張運の間で板挟みになっていたけど、泰麒や民を思う気持ちが本人にも伝わって良かったな。
それと恵棟の朋友の友尚、服を脱ぎ散らかす面白いキャラw高官にもそんな人が居るんだなw
その友尚の服を恵棟が畳みながら話すシーンも良いな。阿選の麾下にもまともな人は居るんだ。
一兵卒からの叩き上げで、事務仕事の苦手な伏勝も良かった。後の巻で活躍するのだろうか?

そして味方では無い平仲淶和。早く自邸に戻って子どもに会いたいと思う平仲には同情する。
でもそんな彼は役目が変わったとの事だった。昇進だけど、喜んであげられない不穏さがある。
淶和はやっぱり間諜だったのだな。でも1巻で泰麒の様子を報告するように言った立昌も、もう
興味を失くしたようだった。朝廷を襲っている無気力の波がどんどん押し寄せているのか。
今回登場した謎の鳩の鳴き声。これがそのひみつみたいだ。さらにまじないというワードも
あって、それは冬官の領分らしい。やっぱり元冬官の琅燦がキーになっているみたいだ・・・。

李斎一行パートは、その捜索がことごとく徒労に終わるのだけど、一つとして無駄では無く、
その道程で戴の窮状などを知れたのが良かった。こういう描写一つ一つが重要なのだよな。
1巻に続き、酷なシーンが描かれていた。仲活は女房が化粧をしても気づかなかったけど、
残された手だけですぐにそれとわかった。せつない・・・それでも笑って前を向いて生きるのが
すごい。僕だったら絶対に無理だろうな。1巻に登場した貧しい一家は、自分の食事を妹たちに
分け与えていた姉が痩せ細って死んでしまった。父親の悲痛な叫びがとてもつらかった・・・。
里に入れず凍死した老人と孫、強盗の恐れもあって外を伺わなかった女性は、自分が強盗に
襲われて死んだ。彼らの死が後ろめたくて黙殺できなかったのだろうという予想は悲しすぎる。
そしてそれを見越した近隣の誰かの犯行かもしれないという予想はもっとやりきれなくなる。
本当に王が玉座に居れば、府第が機能していれば防げた死だったのかもしれないのに・・・。

王の不在による荒廃をこれでもかと実感させられた。そして王の絶対的な必要性も。だから、
梳道の言った「いるかいないか分からない、民のために何一つできない王ではなく、実際に
玉座に坐り、民のために政を施してくださる王が」必要だというシーンではせつなかった。
だからこそ、阿選に追われる事無く、驍宗に玉座に居て欲しかった。そして民には新王が必要
なのかもしれないけど、それが阿選であって欲しくない。僕も許すなんてあり得なかった。

李斎はよく衝動を抑えられず、相手に本心から発言する事が多く、読んでいてはらはらしたな。
実際に驍宗を捜している事が噂になっていたし、いつ阿選側にバレてもおかしくなかったのだ。
命を狙われている身だし、これからはもっと言動に気をつけて、慎重になって欲しいな・・・。
李斎たちの噂を聞きつけ、驍宗らしき人物が毒を盛られ命を落とす事になってしまったけど、
無関係な僕は、阿選側に知られて誅伐を受ける恐れもあった老安の人々を責める事はできない。
でも捜す事は必要だったと思う。どうすれば良かったんだろうな。どちらにも非は無いのだ。
とにかく願うのは、驍宗は実は生きていて、無事玉座に戻る事、そして戴の民が救われる事だ。

あと新たに知った情報では、切られた白雉の脚がだんだん黄金に変じるという事。だから王が
不在の間に御璽の代わりになるのだな!その白雉がまだ落ちていない事も気になるポイントだ。
それとどうでも良い事だけど、鄷都が子どもに「こんにちは」と話しかけたシーンがあって、
この世界でも「こんにちは」って言うんだな!こちらでは当たり前に使っている言葉だから、
何だか平和すぎてギャップがあるなと思ってしまった。戴も、早く平和になって欲しい・・・。


以上、面白かったです。まだ全4巻の半分、この先どうなるか予想もつかない!それではまた。

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このブログでは読んだ作品、作った料理の感想を掲載しています。
2016~2021年は毎週更新、2022年以降は基本的には月2回更新です。
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