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主に読み返した不死鳥作品や作った料理、他に小説や漫画や同人誌などの感想ブログ。

演劇

【演劇感想】2020年10月24日 傷は浅いぞ

はいこんばんはRM307です。今週は演劇回、今回は劇団柿喰う客の「傷は浅いぞ」の感想。
2007年に初演され、2012年にリバイバル公演された際の動画が公式チャンネルにありました。



【あらすじ】
スケジュールが白紙なアイドル矢衾愛弓は、マネージャーの一本槍官兵衛から勧められた
鎖鎌の練習中に鼻を強打してしまった為、ミュージックステーションの生放送中に鼻血を出して
スタッフに退場させられてしまう。しかし瞬間視聴率が上がった事で、裏番組「電波ガールズ
のプロデューサー太刀花鞘花に目をつけられる。彼女は愛弓にオファーを出し、この番組への
出演が決まった。3週勝ち抜けば冠番組を持つ事ができるのだが、その内容は苛烈極まりない、
アイドルを痛めつけるのが目的の番組だった。愛弓は勝ち抜き、人気アイドルになれるのか。


官兵衛が推す特技の鎖鎌を、愛弓だけじゃなくかつてアイドルとしてマネージメントしていた
鞘花も使え、さらにそれだけじゃなく放送作家の盾林までもが使えて最後は三人が回しながら
話が進んでいくなど、笑いどころが多かった。その後うっかり盾林が手放した鎌が鞘花を刺し、
鞘花は死んでしまうのだけど、「運命って残酷」と他人事のように言うシーンも良かった。

でも喜劇では無く、過去に鞘花により官兵衛が交際していた新人アイドル・園山あきなが自殺に
追い込まれていたり、愛弓もレイプされて身体を切られたナイフで相手を殺した過去があったり
など、ダークな面も。番組内容もゴキブリを食べさせるのはまだぎりぎり受け止められたけど、
鞘花がアイドルに硫酸入りのカレーを食べさせて身体をぼろぼろにして声を出せなくさせたり、
高い場所から水の無いプールに落としたりしたのは怖かったなぁ・・・。特にプール、地面に
叩きつけられた時のぐしゃっという効果音や、官兵衛の静かな状況説明の演技に恐怖を覚えた。

でも一番怖かったのはラストシーン。YouTubeのコメントの解説でわかったのだけど、すべては
愛弓の「レイプした相手への正当防衛が認めてられていたら」という妄想で、実際は殺人の罪で
逮捕されて終わる。ただただ自分が傷を受けただけだった・・・という・・・悲しいな・・・。
3週目の企画で、愛弓が傷も含めて自分だと自身の存在を肯定していたけど、現実でも誰かに
肯定して欲しかったのだろうな。でも実際は非情な未来が待っていただけ・・・つらい・・・。
かつて父の収賄容疑でアイドル生命が終わり、官兵衛からも傷物として見放された鞘花が言った
「傷のある人間は、傷のある人間はね、アイドルになれないのよ!」も印象的だったけど、
これも妄想に逃げながらも愛弓が消しきれなかった呪いだったのかと思うとせつない・・・。
僕はアンハッピーエンドはかなり苦手なのだけど、これはすごく良い脚本で好きだなと思った。

あと良いなぁと思ったのが、打ち合わせのシーンで企画の内容や演出の説明をしながら徐々に
ボルテージが上がっていき、そのまま流れるように本番のシーンに移る演出。カッコ良かった。
もちろん演者さんの狂気的な演技も、一切噛まない畳みかけるようなセリフも素晴らしかった。
コメントにもあるけど、4人だけで、道具などを使わなくてもこれだけ魅せられるってすごい!


以上、面白かったです。演劇感想は年4回書いてきましたが、今回でおしまいです。舞台演劇は
まったく観た事が無かったけど、思っていた以上に良かったな。機会があったらまた観たい。
新型コロナウイルスで大変な状況だけど、上手く乗り切っていけますように。それではまた。

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【演劇感想】2020年8月22日 ながぐつをはいたねこ

はいこんばんはRM307です。今月は土曜日が5週あるので、空いた1週は演劇の感想を書きます。
今回も劇団柿喰う客のYouTubeから、演目は「ながぐつをはいたねこ」。子ども向けの公演。
「変身」の感想http://rm307.blog.jp/archives/81402322.html
「美少年」の感想http://rm307.blog.jp/archives/82114107.html



劇の始まりは毎回思うけど、独特の空気を持っているというか、どこか不穏な感じが良いな。
今回は演劇というよりミュージカル(その違いが明確にわかっている訳では無いのですが)の
性質が強く、ほとんど歌いながら進行していった。登場人物の数に対し出演者は5人と少なくて、
カラバとねこ役以外の演者さん3人が様々な役柄をこなしていたけど、3人しか居なかったとは
思えないくらい、もっとたくさん出演されていたように感じたな。プロってすごいなぁ・・・。
どの方も面白かったけど、特に板橋駿谷さん、最後の魔王役では裸になった上半身にたくさん
汗をかいていて、文字通り熱演!という感じだった。くねくねとした身体の動きもすごかったw
魔王の変身したねずみはどう表現するのだろう?と思っていたら、小さい人形で面白かった。
あとは「変身」、「美少年」に出演されていた永島敬三さんもいらっしゃって嬉しかったな。

僕は素人なので演技の良し悪しはわからないけど、はきはきとした発声とか抑揚のつけ方とか
身体全体を使った表現とか、やっぱり観ていて楽しかった。演劇ってホントこの公式動画でしか
観た事が無いくらいなのだけど、ドラマでもアニメでも観られないこういう演技も楽しめる。
生で観たらもっと迫力を感じるのだろうな。今のご時世だと練習も公演もままならなくて、
歯がゆい思いをされているかもしれないな・・・。早く収束して、元通り活動できますように。

以上、面白かったです。公式チャンネルには何本も演劇の動画がアップされていて、少しずつ
観ようと思っていたのだけど、今回久しぶりに開いたら結構な数が非公開になっていた・・・。
前回の「美少年」が面白かったけど一回では理解しきれなかったから、いつかまた観返そうと
思っていたのだけど、期間限定配信だったのかな・・・。まぁ舞台の上が本来の活動場所で、
YouTubeが本業では無いから仕方が無いけど。いつか生で観劇してみたいなぁ。それではまた。

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【演劇感想】2020年5月23日 美少年

はいこんばんはRM307です。今週は演劇回、今回も前回同様劇団柿喰う客の「美少年」の感想。
YouTubeの公式チャンネルの動画はこちら。前回の「変身の永島敬三さんも出演されていた。



【あらすじ】
日本中を揺るがせた、昭和の終わりに起きた美少年の誘拐事件。少年は無事に解放されたが、
たしかに誘拐された本人なのに、以前の彼とは何かが決定的に違っていた。それから30年後、
平成の終わりに事件は起きる。誘拐事件の犯人は、そしてかつての美少年の行き末は・・・。


演劇を観るのは2回目なので、演劇全般がそうなのかこの劇団の特徴なのかはわからないけど、
前回の「変身」同様にめちゃくちゃテンポの速いセリフをよどみなく発するのがすごかった。
シン・ゴジラ」以上に速くて、お客さんたちも初見で理解しているのだろうか?すごいなぁ。
しかも演者4人の声が完璧にそろっていて。なんて、プロにこんな事を言うのは失礼かもだけど。
あと「携帯電話の電源はお切りください」などの上演時の注意から、流れるように劇に入るのも
面白かったな。それを含め、たびたびメタ視点のセリフが入ったり一旦素に戻る演技になって
劇の流れが中断したりするのだけど、中盤からはほぼノンストップ、息もつかせぬ展開だった。
「変身」でもそうだったけど、メタ視点になっても嫌な感じは無く、すんなり楽しめる印象。
上手く言えないけど、最初はメタから入りながらも、劇に昇華されていくのが見事だった。

「美少年を演じる事を完全に放棄し~」など最初から笑いのポイントがいくつもあるのだけど、
実はそれには意味があって、終盤に回収されたり繰り返す事で引き立ったりしたのが良かった。
ただあまりにもセリフと展開が速かったのと、このブログではよく書いているけど僕の頭が
悪い為、ちょっとついていけないところも多かった。相当集中していないと僕には難しいかも。
ストーリーへの細かい感想は、あと2、3回観て理解しないと上手く書けない・・・すみません。
けれどそんな僕でも、「今すごい事が起きている!」という大きな渦のような力を感じたし、
それは大人たちを狂わせた運命と同じような、抗いがたい圧倒的な流れとして伝わってきた。
なるほどなぁ。僕ほど頭の悪くない人だったら、たぶんもっともっと楽しめる1時間だと思う。

遠方に住んでいるので観劇する事は難しいのだけど、生で観たらすごい迫力だろうなぁ・・・。
迫力といえば、美しい石膏像を前にした時の演者さんふたりの表情が、まるで目の前に本物の
石膏像があるような嬉々とした、狂気も感じるような生々しいもので、とても惹き込まれたな。
取り直したり編集したりするものとは違う、演劇ってすごいな!と思いました。それではまた。

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【演劇感想】2020年2月22日 変身

はいこんばんはRM307です。今年から週替りで小説、漫画、映画、料理の感想を書いてきたけど、
土曜日が5週ある月は、残りの1週に何をするか決まっていなかった。何をしようか考えた時に、
そういえば自作品で演劇部を扱っているくせに僕は舞台を観た事が無いな、と気づいたので、
演劇・舞台の動画を観てその感想を書く事にした。しかしDVD化されている舞台はかなり少なく、
レンタルされているタイトルも一通り眺めたけど、どうにも興味を惹かれるものが無かった。
舞台の特性上仕方が無いのかもしれない。しかし諦めずに検索していると、「柿喰う客」という
劇団がYouTubeに舞台の公式動画を投稿している事がわかり、まずはこれを観てみる事にした。

という訳で、今月の演劇感想は劇団柿喰う客によるカフカの「変身」。高校生向けの演目らしい。

掴み?として最初に「山月記」、「羅生門」がグレゴール・ザムザの夢として登場しています。
カフカの「変身」は久しぶりに触れたけど、やっぱり悲しい物語だな・・・ザムザが可哀そう。

幼い頃にアンパンマンのミュージカルを観に行った事はあるけど、演劇を見るのは初めてだった。
最初の印象は、声がよく通る!もしかしたら常識かもしれないけど、マイクって無いんだな!
大きくかつ聴き取りやすい声で、マイクが無くてもしっかりセリフが伝わってきたのがすごい。

そしてめちゃくちゃ動く!指の先までしっかりと、ダンスのように全身を使って表現していて
驚いた。テンポの良いセリフに合わせて常に動いていて、消費カロリーがすごそうだった。
当たり前だけど、身体一つで行動、場面、セリフのニュアンスを伝えるって大変だな・・・!

さらに顔の表情が豊か!遠くの観客にもわかるようにか、とにかく表情が大きく動いていた。
こんなに強く芝居するとは思わなかった。ここまで表情筋を動かすのも大変そうだな・・・。

それと、これまたプロからするとできて当然で、言われるまでも無い話かもしれないけど、
これだけのセリフ量を暗記して誰一人間違える事無く、よどみなく演じるってめちゃくちゃ
すごいな・・・!かなりテンポが速かったので、思い出す時間も無いし、一瞬でも詰まると
破綻してしまう。そんな難しいバランスの中、完璧に息の合った三人の演技が見事だった。

あとこの演目がそうなのか舞台全般がそうなのかわからないけど、客席を向いて演技したり
セリフを言ったりしていた。なるほど、演者の方を向かないんだな。ぜんぜん知らなかった。
他の演目を観てみない事にはわからないけど、そのへんを意識して描かないといけないかもな。

照明も印象的だった。ただ照らすだけじゃなく、こんなに効果的に印象を変えられるのだなぁ。

以上、演劇や舞台に親しんでいる人からすると「何をわざわざ当たり前の事を言っているんだ」
と思われるかもしれないけど、初めて観た人間はとても驚き、面白かったです。それではまた。

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プロフィール

RM307

新都社でFAや漫画を描いたり読んだりしています。
このブログでは読んだ作品、作った料理の感想を掲載しています。
2016~2021年は毎週更新、2022年以降は基本的には月2回更新です。
新都社以外で何か触れた作品があった場合は、その都度投稿するかもしれません。

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